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New Balance社の関連会社に商標権侵害による9800万元の損害賠償命令

 2013年7月、米国の有名な運動靴メーカーNew Balance Athletic Shoe, Inc.(「New Balance社」)の関連会社である新百伦貿易(中国)有限公司(「新百伦公司」)は、中国での商品販売にて「新百伦」の文字を使用したため、広州市在住の周氏に商標権侵害訴訟を提起されました。今般、広東省広州市中級法院(広州地裁)は、原告周氏は靴及び服装等の商品について商標「新百伦」の商標権を所有するところ、被告新百伦公司の行為はその侵害に当たるとして、9800万元の損害賠償(広州地裁の商標権侵害事件における最高額)を命じました。
 2003年、New Balance社は、上海市において新百伦公司を設立し、そのブランド「New Balance」の中文訳「新百伦」を使用して、商品を販売していました。新百伦公司は、カタログでの標章「New balance/新百伦」の使用、公式サイトでの標章「新百伦」の多数の使用、商品宣伝広告、領収証、レシート等での標章「新百伦」の複数回の使用等を行なっていました。周氏は、第25類「服装,靴」等を指定商品として、商標「百伦」(第865609号)を1994年8月に出願し、1996年8月に登録されました。また、商標「新百伦」(第4100879号)を2004年6月に出願し、2007年10月に出願公告されました。これに対し、New Balance社は、当該商標は、商標「New Balance」の模倣であり、類似しているとの理由により、異議申立を行ないました。その結果、2011年7月、商標局により、異議不成立の決定がなされました。New Balance社は再審査請求を行なわず、「新百伦」は登録されました。
 本訴訟において、新百伦公司は、自らの「新百伦」の使用は、善意の先使用であり、「新百伦」を「New Balance」の中文訳、商品の中文名称、ブランド所有者の中文名称として合理的に使用しており、決して商標権侵害に当たらない旨答弁しました。広州地裁の判断は、次の通りでした。
 原告周氏の商標登録2件は合法的なものである。被告新百伦公司が商品販売の際に「新百伦」の文字を使用する行為は、商標としての使用に当たる。また、「新百伦」は「New Balance」の音訳又は意訳ではない。その意訳は「新平衡」であり、また、New Balance社が中文名称を新平衡運動靴公司とし、以前は商品名称を「纽巴伦」としており、「新百伦」が「New Balance」の唯一の音訳とは言えない。新百伦公司による商標「新百伦」の使用は、悪意によるものである。よって、商標権侵害が成立する。
 広州地裁は、新百伦公司に対して、侵害行為の停止と損害賠償を命じました。損害額は、商品に直接「新百伦」を使用していないため、販売利益の1/2とされました。判決において、新百伦公司は、大手会社として、関連公衆間の誤認混同等を生じさせないように、商標を慎重に使用する義務があるところ、既に1996年に登録の商標「百伦」と極めて類似性の高い「新百伦」を商品宣伝の際に使用し、New Balance社が行なった「新百伦」への異議申立が不成立の下、周氏が「新百伦」の商標権者であると知っている筈の中、「新百伦」の使用により誤認混同を生じるおそれがあり、その責任を負うべきである、とされました。
 関係者によると、現在被告側が上訴の準備を進めているとのことです(2015年5月)。

[情報元]上海専利商標事務所 Newsletter 201505
[担当]深見特許事務所 小野正明