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2014年における欧州統一特許制度の進捗

 2014年に欧州統一特許制度には多くの進捗がありました、統一特許裁判所が門戸を開けるのは2015年末よりも早くはなく、おそらく2016年の半ばから後半であろうとされています。統一特許裁判所および欧州統一特許の実務的な局面に、未だ多くの作業が必要であるものの、その準備は2015年末までには完了することが望まれています。
 2013年の欧州統一特許裁判所合意書へのオーストリアによる単独の批准の後、2014年に欧州のさらに5ヶ国が批准しました。(英、独、仏を含む13ヶ国の批准によって発効する)欧州統一特許および統一特許裁判所が発効するまでには、独国、英国を含むさらに7ヶ国が合意書に批准する必要があります。
 英国は、批准の最初のステップを開始する法律を承認しました。一方、独国は、批准を可能とするために法律の修正を立案しています。独国、英国は、統一特許裁判所が実用的観点から門戸を開けない限り批准しないと思われます。アイルランドは、2015年3月に批准のための国民投票を実施する予定です。一方、チェコ共和国は、当初は合意書に批准しないと報告されています。
 単一特許の維持費用や統一特許裁判所の費用は、現時点で具体的な金額が明らかにされていません。「従来の」欧州特許に統一特許裁判所の所轄権を適用させないように(オプトアウト)するための費用、および単一特許の維持費用が特に検討されています。「従来の」欧州特許は、たとえそれらが統一特許裁判所が発効する前に特許されたとしても、オプトアウトを要求し(かつ、費用を支払っ)た場合以外は、すべて、自動的に統一特許裁判所の所轄権に属することになる予定です。そして、オプトアウトの費用は、1特許あたり30,000ユーロとも言われています。単一特許の維持費用は、5~6ヶ国の維持費用と同様と考えられています。EPOは、2015年の半ばにも維持費用を発表すると考えられます。
 なお、スペインが、(英、独、仏語が基本の)翻訳言語規則がEU条約に違反しているとして欧州連合司法裁判所に提訴している問題が未だ残されています。欧州連合司法裁判所法務官はこの訴えを棄却すべきという意見を公表していますが、この意見は欧州連合司法裁判所を拘束するものではありません。

[情報元]Mewburn Ellis, Mews News, January 2015
[担当]深見特許事務所 丹羽愛深