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(英国)医薬品に関して試験・研究の例外規定の適用範囲を拡大

 2014年10月1日、英国において、医薬品に関して試験・研究の例外規定(いわゆるBolar条項)の適用範囲を拡大する改正特許法が施行されました。
改正英国特許法では、60条6D項を追加し、同項において、医薬品の評価でなされるすべての行為、または医薬品の評価を目的としてなされるすべての行為を、同条5項(b)に規定される「試験目的」とみなし、特許侵害の例外とすることが規定されております。また、同条6E項を追加し、同項において、同条6D項に規定される医薬品の評価は、以下の(a)から(c)のいずれかの目的でデータを提供するためになされるいかなる試験、試験の過程、または活動を意味すると規定されております。
(a) (英国または他の地域で)医薬品を販売、提供、販売の申出、または提供の申出をするために承認を得ること。
(b) この承認に関連して、(英国または他の地域において)課されるあらゆる規制要件に従うこと。
(c) 医療の提供に当たり、医薬品を使用するか否か、またはその使用を勧告するか否かを決定する目的で、(英国または他の地域の)政府、公的機関、または、以下の(i)または(ii)の機能を有する個人が、人間用の医薬品の妥当性評価を実施することを可能にすること。
(i) 政府または公的機関を代理して、医療を提供すること。
(ii)政府もしくは公的機関に対して、または政府もしくは公的機関を代理して、医療の提供についてアドバイスを提供すること。
 なお、同条6E項に規定される公的機関として、英国医薬品医療製品規制庁(Medicine and Healthcare Products Regulatory Authority (MHRA))、欧州医薬品庁(European Medicines Agency (EMA))、英国国立医療技術評価機構(National Institute for Health and Clinical Excellence (NICE))が例示されます。
さらに、同条6F項を追加し、同項において、医薬品とは、人間用の医薬品、または動物用の医薬品を意味すると規定されております。
 ドイツなどの欧州諸国は、自国以外において医薬品の承認を得るために行なう試験を特許侵害の例外とする、拡大されたBolar条項を既に有しております。しかし、この拡大されたBolar条項は、欧州連合(EU)において医薬品の承認を得るために行なう試験に限定されております。これに対し、改正英国特許法では、このような地理的な制約はありません(60条6E項(a)から(c)の括弧書)。なお、本改正には遡及効はありません。そのため、2014年10月1日以降の行為についてのみ、拡大された特許権侵害の例外規定が適用されることになります。

[情報元]Jenkins Patent issues, Autumn 2014
[参考]英国特許庁HP情報,日本貿易振興機構(JETRO) 欧州知的財産ニュース
[担当]深見特許事務所 日夏貴史