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確認判決においても特許権者は侵害の立証責任を負う

(1)概要
 最高裁は、全員一致で、Breyer 判事による判決で、CAFC 判決を覆して、侵害の争点が特許権者に対する実施権者の確認判決訴訟において発生した場合でも、特許権者がその侵害の争点の主張責任を負うと判断しました(Medtronic v Mirowski FamilyVentures, Case No.12-1128 (Supr. Ct., Jan 22, 2014)(Breyer, Jutice))。
(2)内容
 本事件は、埋込み型の心臓除細動器として知られる装置に関するものです。MFV(Mirowski Family Ventures)は、特許権者であり、Boston Scientific に特許を独占的に実施する権利を許諾しました。Boston Scientific はMedtronic にそれらの再実施権をさらに許諾しました。実施契約に基づいて、新たに発表された製品が実施権の対象であるとのあらゆる主張に対してMedtronic は確認判決を求めることができました。その後すぐに、Medtronic は、実施権の対象であるとBoston Scientific が主張した新製品について実施料を支払い始めると同時に、非侵害確認判決を請求しました。訴訟の過程を通して、実施権者が非侵害の立証責任を負うのか、実施許諾者が侵害の立証責任を負うのか、当事者の意見は異なりました。地裁は、実施許諾者が侵害の立証責任を負うと判断し、MFV がこの責任を果たせなかったため、Medtronic に有利な判決をしました。MFV はCAFC に上訴しました。
 上訴において、MFV は、Medtronic が救済命令を請求する当事者であるため、およびMFV が当事者間の実施契約の効力により侵害を求める反訴を提起することが排除されるため、Medtronic が非侵害の立証責任を負うと主張しました。CAFC は、MFV に同意し、救済命令を請求する当事者がその訴状における主張の立証責任を負うと判断しました。
 CAFC は、この責任配分は、一般則の例外であり、実施契約がその確認判決において実施許諾者が侵害の反訴を主張することを排除している場合にのみ適用されると説明し、さらに、Medtronic は、現状の救済または変化を求めているため、そのような救済が与えられることを示す責任を負うと説明しました。
 この例外をサポートするために、CAFC は、最高裁がMedlmmune v Genentech(2007)において、実施権者は、無効の確認、非侵害、または権利行使不能を求める確認判決訴訟を提起する資格を有するために契約を破棄する必要がないと判断したこと、および、その後、CAFC がそのような場合に立証責任を転嫁したこと、に注目しました。本判決において、最高裁はまずTessera Technologies により提出されたアミカス・ブリーフにおいて提示されたCAFC の管轄の問題に取り組みました。特に、Tessera は、MFV が侵害行為および実施権により発生した行為に提訴できないため、製品が実施権の対象であるかどうかに関するあらゆる議論はMFV が契約の破棄のための損害のための訴訟を起こすかによって解決されるべきであると議論しました。
 最高裁は、Medtronic が実施料の支払いを中止していたのに注目して、MFV は実施契約を終了させることおよび特許侵害に対する訴訟ができるとしてCAFC に同意しませんでした。
 最高裁は、実施権者が特許権者に対してその製品が実施許諾された特許を侵害しないと主張して確認判決を求めるとき、”特許権者は、侵害の争点の主張責任を負う”と回答しました。Breyer 判事は、「侵害の立証責任は通常特許権者にある」、確認判決訴訟の運用は「手続」に過ぎず、「実質的権利は変わらずに」残る、という裁判所の長く保持された先例を分析しました。これらの3 つの法律的提案をまとめると、実施権者の確認判決訴訟において、侵害の立証責任は特許権者に残存しました。
 最高裁は、さらに、CAFC のルールがMedlmmune に一致せず、また、確認判決訴訟の目的にも一致しないことを見出しました。このことは、実施権者がその実施権を放棄するか侵害訴訟のリスクを冒すかを選択することで直面するジレンマを軽減することになりました。

[情報元]McDermott Will & Emery, IP Updates, Vol. 17, No. 1, January 2014
[担当]深見特許事務所 小寺 覚