販売がなくとも特許権は消尽する
特許消尽が無料で分配された製品に適用されるのかという初めての問題に関し、米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の分割パネルは、「特許消尽の原理は、係争中の特定の譲渡が贈与か販売かにかかわらず、所有権における権原のすべての認可された譲渡に対して等しく適用される」と判示しました(LifeScan Scotland v. Shasta Technologies,Case No. No. 13-1271 (CAFC, Nov. 4, 2013))。
LifeScan は、糖尿病の個人が彼らの血中グルコースレベルを検査することが可能な使い捨ての試験片の使用のための計測器を製造しています。LifeScan は、計測器のいくつかを販売していましたが、「糖尿病の個人が試験片で計測器を使用することを期待する意図で」計測器の大半を無料で配っていました。LifeScan は、各試験片上の2つの作動電極から読み取ったものを比較することにより血中グルコースを計測する改善された方法の特許を保有しています。Shasta がLifeScan の計測器で使用するための試験片を製作した後、LifeScan は、自身の特許の間接侵害でShasta を提訴するとともに、予備的な差し止めを求めました。
地裁は、消尽は関係する「販売」にのみ適用されることを理由に、差し止めを認めました。Shasta は控訴しました。
CAFC は、法律的見地からShasta が特許消尽の抗弁を成立させていたとして、差し止め決定を覆し、地裁へ差し戻しました。CAFC は、Quanta 事件とUnivis レンズ事件に鑑み、LifeScan の計測器は実質的に特許方法を具現化し、合理的な非侵害の使用である理由がないと判示しました。LifeScan は、計測器を無料で引き渡して特許発明に対して報酬を受けていなかったため、消尽は適用されないと議論しました。CAFC は、「最高裁判所は、『販売』および『購入者』に頻繁に言及しているものの、より原理的に、特許製品が譲受人に『手渡され』その人が『法的に権原を獲得した』ときに生じるものとして、消尽を記述している」として、これに同意しませんでした。CAFC は、特許権者の権利は、特許された機械の製造を認可した時点で消尽するという最高裁判所の昔の事件を引用して、販売の欠如は消尽の障壁にはならないと判示しました。また、CAFC は、無料の販売促進用のCD の引き渡しが著作権者の権利を消尽させるという説得力のある著作権事件にも言及しました。
特許権者は、発明を具現化する商品に一定の価格を要求することによって報酬を求めるか、または、LifeScan が行なったように将来の利益を見込んで無料で商品を引き渡すかを行ない得ます。しかしながら、特許権者が商品の所有権を無条件に手放したとき、その結果として不十分な報酬しか得られず、特許消尽の通常の原理が適用されなくても、後で苦言を呈することはできません。
反対意見として、レイナ判事は、特許方法の進歩性は計測器ではなく試験片にあり、引き渡しであっても販売であっても、特許方法の本質的な特徴が方法を行なっている間に直ちに消費される場合、消尽は適用されるべきではないと述べています。
[情報元]McDermott Will & Emery, IP Update November 19, 2013
[担当]深見特許事務所 紫藤則和