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HTC vs ノキア(英国/米国) -特許侵害を守るためのライセンスには限界があるかもしれない-

 2013 年10 月30 日、HTC とノキアとの間における携帯電話に関する標準外の要素特許についての裁判で判決が下されました。この件では、ノキアは、HTC のいくつかの携帯電話機が台湾でブロードコムおよびクァルコムからHTC に提供されたチップを搭載していることで、ノキアの特許侵害をしていると主張しました。これに対してHTCはその特許権は無効と争いました。
 判決では、この特許は有効であり、かつ侵害が認められてはいます。しかしながら、おそらく、この場合の最も大切なことは、HTC による侵害から守る権利についてのライセンスおよび/または消尽に関することでしょう。特に、HTC はノキアとクァルコムとの間で交わされた合意の存在に依拠しています。その合意は、ノキアが特許侵害についてクァルコムを訴えないとの合意を含むものです。この合意の詳細に関しては明らかにすることはできません。HTC は、暗黙のライセンスに関する英国の法律、および権利消尽理論に関する米国の法律との2つの法律的な根拠に基づいて、ノキアから同意があったことを暗に示すことを試みました。
 特許権者が一旦特許製品を海外で販売すると、その製品を輸入し、英国で販売することに関して英国特許は阻止することはできないとされています。これは、権利の国際消尽の問題ではなく、海外における購入者に対してその特許製品を自由にすることができる黙示の許諾を与えたことによるものです。しかしながら、上記のライセンスが存在するためには、明確な表現によって購入者に許諾が与えられた場合に限られます。
 しかしながら、明確なライセンスのある状況は様々であって、様々な判例があります。HTC は、黙示のライセンスと明確なライセンスとの間で状況が異なることは論理的でないと示唆されたティルマンの特許裁判における判決に疑問を呈しようとしました。
 裁判官はこの主張にメリットがないことは理解していたものの、裁判官はこの判決に拘束され、HTC は上記の同意の下でクァルコムに対して与えられていた権利よりも大きな、HTC が英国で行なっていたことを含む権利を得ることはできなかったのです。
 米国権利消尽理論は米国連邦特許法の一部であり、米国法ではないという関係があります。それにもかかわらず、判決では、権利消尽理論の適用が否定され、専門家の証言を得て、権利消尽理論の米国製品販売に関する適用には限界があり、それ故、HTC のライセンス防御は不足していると判断されました。
 この事件は、ノキアとクァルコムとの間で交わされたような部品についての特許ライセンスの同意を交渉したり依拠したりする関係者には関連するものかもしれません。たとえば、この判決は、ライセンス合意中ではっきりと謳われている場合には米国権利消尽理論の適用の用意があることを示したものとも受け取られます。さらに、多くのライセンス合意が世界規模を視野に入れたものではあるものの、その合意は、一般的には、権利消尽および類似した法律理論については明らかに真実ではありません。

[情報元]D Young&Co Patent Newsletter No.38 December 2013
[担当]深見特許事務所 丹羽愛深