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欧州特許条約(EPC)規則改正について

 2010 年4 月1 日より施行が予定されております欧州特許条約規則改正等について、下記の如く御報告申し上げます。

1.改正の概要は、以下のとおりです。
1 分割出願の時期的制限(改正規則36)
2 1つのカテゴリに複数の独立クレームがある場合の調査(新設規則62a)
3 拡張されたヨーロッパ調査報告(EESR)への応答の義務化(新設規則70a)
4 補正の根拠の明示の義務化(改正規則137(4))
5 クレーム補正の制限(改正規則137(5))
6 EPOによって作成された国際調査報告/国際予備審査報告の見解への応答の義務化
(改正規則161)

2.上記概要を踏まえ、下記の御確認および御検討をお薦め致します。
1 現在係属しているEPC出願に関し、重要な案件については分割出願が可能な期間内に予備的な分割出願を行なうことをご検討ください。
2 EPC出願用のクレームドラフトにおいて、1つのカテゴリには単一の独立クレームとすることをご検討ください。
3 EESRに対して応答が必須となることにご留意ください。
4 クレーム補正において根拠の特定が必須となりますので、特許事務所に対する補正のご指示の際にはその根拠を明示頂くことが代理人費用の節減につながります。
5 EPOによって国際調査報告/国際予備審査報告が作成された場合には、1ヶ月以内の応答が必須となることにご留意ください。

ここに含まれる情報は一般的な参考情報であり、法的助言として使用されることを意図していません。従って、IP 案件に関しては弁理士にご相談下さい。

改正1.分割出願の時期的制限(改正規則36)
⇒2010 年4 月1 日に欧州特許庁(以下「EPO」)に係属している全ての出願について、分割出願を提出することができる時期が制限されます。(現在は、親出願がEPOに係属していれば可能)
改正規則36(1)
(1)出願人は、以下の条件を満たす場合、係属している先のヨーロッパ特許出願に関連する分割出願をすることができる:
(a)局指令が発行された最先の出願について、審査部の最初の局指令から24ヶ月の期間の満了前に、分割出願が提出されること、
または、
(b)先の出願が第82条(注:単一性)の要件を満たしていないとして審査部が拒絶している、いずれかの局指令から24ヶ月の期間の満了前であって、その局指令が初めて当該特定の拒絶を提起している場合に、分割出願が提出されること。

猶予期間
 2010 年10 月1 日より前に、上記24 ヶ月の期間が満了する出願(すなわち、2008 年10月1 日以前に局指令が発行されて、EPOに係属している出願)に対して、6 ヶ月の猶予期間が与えられます。
 これらの出願については、2010 年4 月1 日から2010 年10 月1 日まで、分割出願が可能です。

 

経過措置
(1) 改正規則36(1)で規定される24 ヶ月の期間が、2010 年4 月1 日前に満了する場合には、2010 年4 月1 日から6 ヶ月以内に(2010 年10 月1 日までに)、分割出願可能。

改正2.1つのカテゴリに複数の独立クレームがある場合の調査(新設規則62a)
⇒同一のカテゴリ(装置、方法など)の独立クレームが複数個含まれている場合には、いずれの独立クレームについて調査すべきかの応答が求められます。応答しない場合には、そのカテゴリにおいて最初に記載されている独立クレームについて調査されます。
規則43(2)
ヨーロッパ特許出願は、その出願の主題が以下の1つを含む場合に限り、同一のカテゴリに複数の独立クレームを含むことができる:
(a)複数の相互に関係のある物(product)
(b)生成物あるいは装置の異なった用法
(c)特定の課題に対する代替の解決策であって、1つのクレームによってこれらの代替案をカバーすることが不適切な場合

(a)の例 プラグとソケット、送信機と受信機
(b)の例 2つ以上の医療用途に向けられたクレーム
(c)の例 一群の化学合成物の製造のための2つ以上のプロセス
OKの例
クレーム1. 「・・・を含む、プラグ。」
クレーム2. 「・・・を含む、ソケット。」
NGの例
クレーム1. 「Aと、Bと、Cとを備える、プラグ。」
クレーム2. 「Aと、Bと、Dとを備える、プラグ。」
新設規則62a
(1)提出されたクレームが規則43第2パラグラフの規定に適合していないと、欧州特許庁が判断した場合には、欧州特許庁は、出願人に対し、2ヶ月以内に、調査の対象とすべき規則43第2パラグラフに適合するクレームを示すことを求めるものとする。
 もし、出願人が、期限までにそのような指示を提出しない場合には、調査は、各カテゴリの最初のクレームに基づいて行なわれる。

改正3.拡張ヨーロッパ調査報告(EESR)への応答の義務化(新設規則70a)
(現在)
EESR に応答しない場合、最初の局指令として、EESR を参照する1頁のみを含むものが発行されます。
(調査部の審査官と、審査部の審査官とが同一人物である場合が多いため、通常は、EESR
の内容が、そのまま局指令の内容とされています)。
(改正後)
EESRへの応答は義務化されます。応答書が提出されない場合には、出願は取り下げられたものとみなされます。
応答期限
(1)Euro-PCT出願(欧州特許条約が指定されたもの)の場合
 規則70(2)の期限、すなわち、出願人が、出願をさらに進めることを望む旨を宣言するまで。通常、期限として、EPO によって2ヶ月が指定され、最長6ヶ月まで延長可能です。(2)欧州特許出願を直接行なった場合
審査および指定手数料の支払期限(欧州調査報告の公開から6ヶ月)まで。

改正4.補正の根拠の明示(改正規則137(4))
(1)補正は識別される必要があります。⇒たとえば、米国特許庁に提出される補正書と同様に、文書作成ソフトの「変更履歴」を利用することができます。
(2)補正の根拠は示されなければならなりません。(例)「特徴Xは第5頁第5-10行に開示されている」
(3)もし、いずれかの要件を満たしていない場合には、瑕疵を訂正するための期間として1ヶ月(延長不可)が指定されます。

改正5.EPOにより作成された国際調査報告/国際予備審査報告の見解への応答の義務化(改正規則161)
(1) EPOが国際調査機関または国際予備審査機関であった場合には、EPOによって発行された見解書に対する応答は、必須となります。
(例)PCT出願が、日本国特許庁を受理官庁として、英語で行なわれた場合
(2) もし、応答書が提出されない場合には、当該出願は取り下げられたものとみなされます。
(3) 応答のための期限は、規則161 に基づく局指令の発行日から1ヶ月です(延長不可)ので、特許事務所および貴社の双方が迅速に手続を進めることが必要となります。
その他.費用の改定について(2009 年4 月1 日施行)
(換算レート:1 ユーロ=135 円)
(1)ページ課金について
明細書、クレーム、図面、要約について、総ページ数が35 ページを超える場合、超過1ページ当たり12 ユーロ(1,620 円)の追加手数料、が必要となります。対策として、たとえば、明細書等を提出する際には、規則で許容される最小サイズの文字で明細書等を準備して、ページ数が増えないようにする。
(2)指定手数料
指定国の数は無関係に、1指定あたり、500ユーロ(67,500 円)となります。

以上