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用法・用量に特徴を有する第2 医薬用途発明の進歩性を容認した韓国大法院の判決

 最近、韓国大法院は、リバスチグミンの全身性経皮投与を特徴とする第2 医薬用途発明に対してリバスチグミンの全身性経皮投与用途が先行技術から容易に想到できないと判示することで、特許の有効性を認定する判決を下した(大法院2017.8.29.宣告2014Hu2702 判決)。
<事件の概要>
A. 本件特許発明
 韓国特許第121596 号(以下、「本件特許」)は、遊離塩基または酸付加塩形の(S)-N-エチル-3-[(1-ジメチルアミノ(エチル)-N-メチル-フェニル-カルバメート)](一般名:リバスチグミン)および全身性経皮投与に適した薬学的担体または希釈剤を含む全身性経皮投与用医薬組成物に関するものである。
 本件特許の明細書によれば、本件特許発明によりリバスチグミンが経皮投与されるとき、予期せぬ優れた皮膚浸透性を呈することが判り、リバスチグミンの全身性経皮投与が脳におけるアセチルコリンエステラーゼの長期間抑制を導き、アルツハイマー病、パーキンソン病などの治療に有効である。
B. 先行文献
 本件特許の無効審判の請求人が提出した先行文献には、リバスチグミン化合物のラセミ体混合物とこれの経口または非経口の投与方法が開示されており、かつ、アルツハイマー病やパーキンソン病の治療に有用な他の活性成分(例:フィゾスチグミン)の投与のために経皮伝達システムが用いられることが教示されている。
C. 無効の主張
 無効審判の請求人は、以下の理由で本件特許の優先日当時に通常の技術者がリバスチグミンの全身性経皮投与を容易に発明できたと主張した。
(ⅰ)引用発明1 は、リバスチグミンの非経口投与を開示しつつ、リバスチグミンが高い脂質溶解度、低い融点、短い半減期、少ない分子量などのような優れた皮膚浸透性を有する点を教示している。
(ⅱ)引用発明2 は、経皮伝達システムがアセチルコリンエステラーゼ阻害剤(すなわち、フィゾスチグミン)の短い半減期および狭い治療域の問題を解消するために用いられる点を教示している。
(ⅲ)経皮投与システムは薬剤分野で広く知られた技術であり、通常の技術者が医薬開発過程で医薬成分の投与方法を最適化するために試みるはずであることは自明である。
(ⅳ)リバスチグミンの経皮投与により達成される作用持続時間は通常の経皮投与システムが示す効果に比べて量的にあまり変わらない。
<大法院の判決>
 下級審である特許法院では、無効審判の請求人の主張を受入れ、本件特許を無効と判断した。
 しかし、大法院は、リバスチグミンの経皮吸収性が先行技術から容易に期待できるものでなく、かかる期待もしていないリバスチグミンの特性・効果を用いた経皮投与を特徴とする本件の医薬用途発明は先行技術に比べて進歩性を有するものと判示しつつ、特許法院の判決を破棄した。
 具体的に、大法院は、引用発明1には経皮投与に関する具体的な言及なしに経口または非経口投与のみが開示されており、引用発明1が、リバスチグミンが経皮吸収性に関連した一部の特性を示すと記載しているとしても、このような特性を有する化合物が経皮吸収性に優れていると断定できないため、リバスチグミンの優れた経皮吸収性は引用発明1から容易に予測できないと判示した。
 また、本件特許の優先日前からパッチのような経皮投与システムが当業界で使用されてきており、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤のうちの1つであるフィゾスチグミンを含有する経皮吸収型パッチが公知にされているという事情だけではリバスチグミンの経皮投与が容易に採択できるとは見受けられない、と付け加えた。
<判決の意義>
 本判決は、大法院が用法・用量に特徴を有する第2医薬用途発明の進歩性を認定した最初の判決という点に意義がある。

[情報元]FirstLaw IP News September 2017
[担当]深見特許事務所 小寺