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台湾特許法の改正-特許要件喪失の猶予期間を12 ヶ月に緩和

 外国知財情報レポート2017 年春号の記事で新規性喪失の例外に関する法改正について既にお知らせ致しましたが、出願時の申請手続に関する追加の情報をお知らせします。
 台湾では発明/実用新案の新規性・進歩性の特許要件喪失例外の猶予期間を6 ヶ月から12 ヶ月に延長する特許法の一部改正案が2017 年1 月18 日に台湾総統から公布されました(意匠は従来通り6 ヶ月)。更に2017 年4 月6 日には、改正法を2017 年5 月1日から施行することを行政院が公告しました。
 新規性・進歩性喪失の例外規定に関する改正要点は下記の通りです。改正法は2017年5 月1 日以後の出願に適用されます。
1. 猶予期間を12 ヶ月とする法定期間の対象は発明と実用新案のみで、意匠は含まれません。法定期間の計算は、事実発生の翌日から起算して出願日当日までです。例えば、2017 年5 月1 日に出願する発明・実用新案は、2016 年5 月1 日以降の公開について、例外規定が適用されます。
2. 公開には、出願人自らの意思による公開と、自らの意思に反する公開の両方が含まれます。また公開の方法(例えば、実験による公開、刊行物での発表、展覧会での展示等)も問われません。但し、台湾又はその他の国で出願された発明・実用新案・意匠が法に基づき公報に公開され、それが出願人の意思に基づくときは例外規定は適用されません。
3. 改正前の条文では新規性・進歩性喪失の例外規定に該当する事由が明記され、また「出願時に事実及びその発生の年月日を明確に述べ、かつ、特許主務官庁の指定期間内に証明書類を提出しなければならない。」と規定されていました。そのため例外規定の適用を申請する場合は、出願願書の声明事項の欄にある「猶予期間を主張する」の箇所をチェックし、更にその事実及び日付を記載しなければなりませんでした。改正条文では上記の事由と要求される手続が削除されました。従って、出願時に願書に新規性・進歩性喪失の例外規定に該当することを記載する必要はなくなりました。
4. 但し、今回の特許法改正に合わせて修正された願書のフォームの声明事項には、「本願は猶予期間の関連規定に合致する。」とのチェック欄があります。特許法の一部が改正されたため、特許法施行規則及び審査基準もこれに合わせて改正されましたが、改正された審査基準では、「猶予期間に関連する規定に合致する場合、出願時の声明は手続要件ではない。出願人は審査作業に利するよう、当該出願が猶予期間関連規定に合致していると認める場合は、「本願は猶予期間の関連規定に合致する。」の箇所をチェックして、公開の事由、事実発生の日付を記載し、公開を証明する文書を提出することもできる。」と記載されています。すなわち、例外規定に該当することを出願時に声明することは要求されません。しかし声明することもできます。
 台湾知的財産局の専利一組の説明によると、前記新規性・進歩性喪失の例外がある場合に、審査官が審査段階において公開事実を発見したときは(特に第三者による公開)、審査意見通知書を発行して出願人に説明を求めることになります。これに対し、出願人が出願時に新規性、進歩性喪失の例外の適用を受けることを自主的に声明すれば、知的財産局は出願人に証明書類を提出するよう促し、OAが発行されて応答書を提出しなければならないといったことが回避されるので、双方にとって簡便となります。
5. 新制度はこれから施行されるので、新規性・進歩性喪失の例外規定に合致することを出願時に声明するかしないかについて、現時点で詳細な利害分析を行なうのは容易でありません。しかし、自らの意思による公開である場合、手続上、声明しない方が簡便であるものの、後日、審査/無効審判の証拠としてその関連事実が挙げられた場合、出願人は自らの意思による公開であったことを証明しなければならないため、挙証の観点から、出願時に声明してもよいと思われます。

[情報元]UNION PATENT SERVICE CENTER April 27, 2017
[担当]深見特許事務所 杉本 さち子