スマートフォン特許戦争:CAFCオンバンクがCAFCパネル判決を非難し、Apple勝訴の陪審評決を復活させた
CAFCオンバンク(en banc)は、CAFCパネル判決を覆す判決を下しました。CAFCオンバンクは、CAFCの控訴審としての限定された役割と、地裁および陪審員の事実認定を尊重する必要性とを改めて表明しました。
背景
この上訴は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ市場におけるAppleとSamsungの間の世界的な規模の特許戦争における地裁判決から生じたものです。Appleは、同社の5件の特許について特許侵害訴訟をSamsungに対して提訴し、Samsungも同社の2件の特許で反訴しました。陪審員は、2014年に、Appleの特許3件が有効かつ侵害されている一方、Samsungの特許1件が有効かつ侵害されているとの評決を下しました。地裁は、この評決に基づいて判決を下しました。両者は上訴しました。
CAFCパネル
CAFCパネルは、2016年2月26日に、Appleの2件の特許の有効性に関する地裁判決およびAppleの残りの1件の特許の侵害に関する地裁判決を破棄するとともに、Samsungの1件の特許の有効かつ侵害に関する地裁判決を支持しました。
CAFCオンバンク(大法廷)
Apple は2016年2月28日に、CAFCパネル判決を不服としてCAFCオンバンクでの再審理を要請しました。2016年10月7日のオンバンク判決において、地裁判決が復活しました。CAFCオンバンクは、控訴審としてのCAFCの役割は、当事者らが控訴で提起した事項に対して下級裁判所の記録のみに基づいて判断することに限定されるとの見解を表明するとともに、CAFCは、地裁での事実認定を尊重することが義務付けられているとの見解を表明しました。CAFCオンバンクの大多数は、CAFCパネルが、記録にない辞書上の定義を使用して特許の用語を解釈したことに対して、懸念を示しました。
本件は、連邦最高裁へ上訴(certiorari)される可能性が高いと考えられます。
実務上の注意点
今後、CAFCパネルが当事者が争点としていない事実認定を覆すことはなくなりそうです。CAFCパネルが、陪審員による事実認定を再審理するときには、実質的な証拠テスト(substantial evidence test)を適用することになりそうです。
[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 19, No. 10
[担当]深見特許事務所 西川 信行