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韓国の地裁、ジェネリック薬剤を特許侵害と認定せず

 韓国の地裁(ソウル中央地方法院第12民事部)は、BMS(原告)とDONGA-ST(被告)との間で争われていたB型肝炎治療剤についての特許権侵害訴訟において、DONGA-STが販売したジェネリック薬「BARACLE」は、BMSのオリジナル薬「バラクルード」の物質特許を侵害していない、と判決しました。
 BMSは、DONGA-STが「バラクルード」の物質特許の満了(2015年10月9日)前の2015年9月7日に「BARACLE」を販売したとして、それによる損害賠償を主張しました。
 これに対して、地裁は、「バラクルード」の物質特許の延長された3年11ヶ月の存続期間のうち、補完資料(当局から要請された安全性および有効性の審査に関する補完資料)の提出までにかかった1ヶ月と28日の期間は無効と判示しました。特許庁は上記期間も存続期間延長に含めましたが、地裁は補完資料の提出に上記期間を費やしたことを権利濫用に当たるとして、少なくとも上記期間の延長は無効である、と説明しました。
 また、地裁は、DONGA-STが「BARACLE」の販売前の2013年7月から2014年6月までに実施した第4相臨床試験も特許侵害の要素がないと判示しました。DONGA-STが第4相臨床試験を通じて製品のPR効果を得たとしても、実際の販売は特許の存続期間満了以降に行なわれたのであれば、特許侵害ではない、と説明しました。
 本事件においてDONGA-STの弁護を担当しているカン・ドンセ弁護士は、「今回の存続期間延長の無効判決は、DONGA-STが請求した特許審判事件だけでなく、韓国国内メーカが提起した他の審判事件にも大きな影響を与えるものと思われる」とし、「これまで慣行上認められていた部分が違法という判決がでたことにより、存続期間延長審判でも再検討が必要である」と述べています。

[情報元]河合同特許法律事務所 特許&技術レポート2016-7
[担当]深見特許事務所 小寺 覚