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韓国大法院全員合議体判決、実施権者の無効審判請求人適格を認定

 韓国大法院は、2019年2月21日宣告2017Hu2819全員合議体の判決により、特許権の実施権者は、実施対象の特許権に対して無効審判を請求できる利害関係人に該当することを明らかにしました。

背景
 韓国特許法第133条第1項は、特許無効審判は利害関係人又は審査官だけが請求できると規定しています。これまで大法院は、実施権者が無効審判請求の利害請求人に該当するかについて統一的な基準を提示せず、事案によって異なる判断をしていました。
 すなわち、一方では、実施権者は特許権者に対価支払い義務を負わなければならないので、実施権許諾を受けたことによって、当該特許の無効を主張し得る利害関係を失うとは言えないと判断しましたが、他方では、実施権者は特許権者から権利の対抗を受けるおそれがないことから、業務上の損害を被ったり、あるいは損害を被るおそれがないため、利害関係人に該当しないと判断しました。

本件判決の趣旨
本件判決は、実施権者が無効審判請求の利害関係人に該当する理由として、以下の理由を挙げています。
 韓国特許法第133条第1項に規定する利害関係人とは、当該特許発明の権利存続によって法律上の不利益を受けたり、あるいは受けるおそれがあって、その消滅に関して直接的かつ現実的な利害関係を有するものをいい、当該特許発明と同種の物品を製造・販売する者、もしくは製造・販売する予定がある者も含まれます。
 一方、特許に無効理由が存在するとしても、無効審決が確定するまではその特許権は有効に存在し、その存在を否定できません。また、無効審判を請求しても、無効審決が確定するまでは相当の時間と費用がかかります。そのため、特許権に対する実施権設定を受けずに実施したい者でも、ひとまず特許権者から実施権設定を受けて特許発明を実施し、その無効可否に対する争いは先送りしておくことがあるため、実施権設定を受けたとの理由で特許の無効可否について争わないとの意思を表示したと断定することはできません。
 また、本件特許に対する無効審決が確定する場合には、本件ライセンスプログラムの規定によって本件特許権に対するライセンス契約は失効し、本件特許発明は本件ライセンスプログラムから除外されるため、本件特許権の実施権者である被告としては何ら制限なく本件特許発明を実施できるようになるところ、被告は本件特許発明の権利存続によって法律上の不利益を受け、その消滅に関して直接的かつ現実的な利害関係を有する者に該当します。
 なお、本件判決は、不争条項(No-contest Clause)の有効性については特に述べていません。

[情報元]FirstLaw IP News, 2019年3月
[担当]深見特許事務所 小寺 覚