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Fast-Track Appeals Pilot Programの開始

 米国特許商標庁(USPTO)は、2020年7月2日からFast-Track Appeals Pilot Programを開始しました。
 Fast-Track Appeals Pilot Programは、査定系審判(ex parte appeal)を迅速に進めることを特許審判部(PTAB)に対して要求することができる新たなパイロットプログラムであり、既存の優先審査プログラム(Track One)の延長として位置づけられています。
 本パイロットプログラムにおいて、USPTOは請願の受理日から6ヶ月以内に審決を出すことを目標にしており、Andrei Iancu長官は、「USPTOの歴史上初めて、出願人は特許審査と査定系審判の両方を迅速に行うことができ、その結果、最も重要な発明について通常の出願の約半分の時間で決定を得ることができるようになる。」と述べています。
 本パイロットプログラムの適格性要件としては、以下のことが挙げられています。
・出願タイプ
実用特許、意匠特許、または植物特許についての非仮出願を対象とすること。
・審判のステータス
審判請求書が提出済みであり、かつ、審判番号通知(PTAB docketing notice)がUSPTOによって発行されていること。
・請願書の提出
審判請求人はUSPTOの電子ファイリングシステムを介して37 CFR 41.3に基づき請願書を提出する必要があり、請願書では出願番号および審判番号を示すこと。
・手数料
請願料として400ドル支払うこと。
 USPTOは、本パイロットプログラムの請願の数について四半期ごとに125件の上限を設け、1年間で500件までに制限しています。最初の「四半期」は本パイロットプログラムの開始日からの3ヶ月として定義されています。125件の上限を超えた場合でもUSPTOの裁量で請願が許可される場合もあります。上限を大幅に超える請願が四半期中に提出された場合、そのような請願は受領順に次の四半期に持ち越されます。
 なお、本パイロットプログラムは、向こう1年間実施される予定です。
 本パイロットプログラムによってファーストトラックのステータスが付与された審判の口頭審理は、通常の口頭審理の手順に従って行われます。請求人は、指定された場所および日時での口頭審理を希望しない場合に、口頭審理を放棄することもできますが、指定された場所および日時の変更をした上で本パイロットプログラムに留まることはできませんので、注意が必要です。

[情報元]USPTOウェブサイト(※1)
[担当]深見特許事務所 岸 彰

(※1)https://www.uspto.gov/patents-application-process/patent-trial-and-appeal-board/fast-track-appeals-pilot-program