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UPC開始の予想されるスケジュールについて

統一特許裁判所(UPC)の開始に関して、UPC準備委員会は予想されるスケジュールを発表しました。

1.UPCの経緯と現状
 先に弊所の「外国知財情報レポート 2021-9月発行」の「1.(欧州)UPC協定承認法に対する憲法不服申立を却下したドイツ連邦憲法裁判所決定の紹介」においてご報告いたしましたように、ドイツ連邦憲法裁判所は、2021年7月9日付けのプレスリリースにおいて、統一特許裁判所(Unified Patent Court: UPC)協定に関するドイツでの承認法に反対する仮差止命令の2件の申請を、2021年6月23日付で却下したことを発表しました(2 BvR 2216/20)。
 これを受けて、ドイツ連邦大統領は2021年8月7日に法案に署名し、ドイツがUPC協定を批准することを許可する法律が2021年8月13日に発効しました。

2.今後の予想されるスケジュールについて
 UPC準備委員会(UPC Preparatory Committee)は、UPCの開始に関して予想されるスケジュールを発表しました。委員会のウェブサイトの最新ニュースによると、UPC準備委員会は、統一特許裁判所が2022年半ばには早くもその活動を開始するであろうと予測しています。
 ドイツがUPC協定を批准することを許可する法律が2021年8月13日に発効した後、UPC協定の暫定適用に関するいわゆる議定書(Protocol on the Provisional Application of the UPCA)を発効させるために、ドイツとさらに他の2つの締約国が必要な措置を講じることになります。他のどの締約国がそうすることができるかはまだ不明であり(オーストリア、ギリシャ、ルーマニア、スロベニア、マルタ、ポルトガルが候補)、またこれがいつ行われるかも不明ですが、準備委員会はこれらの批准が「今年の秋の内に行われるであろう」と予想しています。
 暫定適用期間中に、裁判官の採用やITシステムの構築などの準備段階が完了している必要があり、この段階では8ヶ月の期間が必要と推定されます。したがって、準備段階が実際に2021年11月までに開始された場合、2022年夏にはUPCを開始することが可能になるでしょう。

3.留意すべき事項
 このようなスケジュールは、いわゆる「日の出の期間(sunrise period)」が2022年春には早くも始まる可能性があることを意味します。「日の出の期間中」に特許権者はその既存の欧州特許を、UPCがその活動を開始する前にUPCの裁判管轄からオプトアウトする機会を有するでしょう。このようにして、特許権者は、この新しいシステムに参加しているすべての締約国において関連する特許の有効性に異議を唱える中央での取消訴訟を回避することができます。

[情報元]

① Hoffmann Eitle Newsletter 3/2021:UPC Update
② UPC準備委員会(UPC Preparatory Committee)ウェブサイト
(https://www.unified-patent-court.org/news/what-decision-german-federal-constitutional-court-means-unified-patent-courts-timeplan)

[担当]深見特許事務所 堀井 豊