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北京市知識産権局による電子商取引プラットフォーム上の意匠権侵害紛争の処理

 納恩博(北京)科技有限公司(以下、申立人といいます。)は、2016年1月に名称を「バランススクーター(ミニ)」とする意匠権(専利番号ZL201530316168.9)を取得しました。当該専利権は申立人が権利侵害紛争処理の申立をした時点で適法かつ有効でした。

 申立人は、杭州錦鋒智能科技有限公司、杭州傑沢貿易有限公司、深圳市飛特威科技有限公司など複数の被申立人(以下、被申立人といいます。)が電子商取引プラットフォームで販売しているバランススクーター製品が係争専利権の保護範囲内であると確認し、北京市知識産権局に専利権侵害紛争処理の申立をしました。2019年3月18日、北京市知識産権局は法に基づいて一連の事件を受理し、被申立人および権利侵害で訴えられた製品の型番を対象に計20件立件しました。被申立人は、権利侵害で訴えられた製品と係争専利には大きな違いが存在し、権利侵害で訴えられた製品と係争専利との共通点はいずれも先行意匠によって公開されているので、係争専利の意匠の要部ではなく、また、権利侵害で訴えられた製品と係争専利との相違点は共通点に比べて全体的な視覚効果に与える影響がより大きいことから、権利侵害で訴えられた製品と係争専利とは同一又は類似とはいえないので、権利侵害を構成しないと主張しました。

 北京市知識産権局は、審理の結果、バランススクーター系の製品は車体、車輪、制御レバーおよびハンドルからなるデザインは、ありふれたものであると判断しました。しかし、申立人の係争専利における車輪の直径とレッグ制御レバーの長さの比率による意匠はそれまでの意匠にはない新しいものであり、これから生じる全体的に小型で軽量な印象を与える視覚効果は、革新的なデザインであるということができ、このような小型軽量のデザインスタイルは一般消費者により強い印象を与え、他の意匠とは別異の美感を有するものであるとしました。そして、権利侵害で訴えられた製品の当該部分におけるデザインは係争専利の当該部位におけるものの特徴と基本的に同一であると認定し、「全体的な観察、総合的な判断」の原則に基づき、権利侵害で訴えられた製品は専利製品に照らして顕著な相違点はなく、全体的な視覚効果において実質的な差異はないので、類似意匠に該当すると判断しました。北京市知識産権局は、上記の被申立人の行為は申立人の権利を侵害すると認定し、係争意匠権を侵害する製品の実施を直ちに停止するよう命じました。

 本件はインターネット上の電子商取引プラットフォームで発生した集団的権利侵害事件に該当します。北京市知識産権局は法に基づいて、本行政区域内で同一の専利権を侵害していた20件の事件を統合して処理し、「全体的な観察、総合的な判断」の原則に基づき、権利侵害で訴えられた製品と専利製品を比べて全体的な視覚効果に実質的な差異がなく、類似意匠に該当すると判定し、遅滞なく、上述の意匠権侵害紛争の行政裁決を下しました。近年、インターネット上の電子商取引に係る知的財産権の侵害事件が多発しており、その損害は深刻であって、かつ専利権者にとってそのような侵害行為の排除は容易ではないことが大きな問題となっており、この問題解決は中国の知的財産権保護における急務となっています。この一連の事件の迅速的かつ効率的処理は、今後の同様の事件にとって参考になるものと思われます。

[情報元]集佳知識産権代理有限公司 集佳中国知財情報 No.184 November.28, 2021

  [担当]深見特許事務所 藤川 順