国・地域別IP情報

クレーム解釈に関する新判断基準を制定した米国最高裁判決

 1月20日、最高裁はTeva Pharmaceuticals USA v. Sandoz事件についての判決を出しました。本件は、7対2の判決であり、クレーム解釈をあらゆる面から再び見直すとしたCAFCの従来の方法を覆しました。要約すると、最終的なクレーム解釈が再び見直されますが、クレームの用語について補助的な事実の論争がある場合(例えば、クレーム解釈中に提示された外的証拠についての論争がある場合)、「明らかに誤りで」ない限り、CAFCは地方裁判所のクレーム解釈を尊重して地方裁判所の事実認定を見直す必要があるとされました。
(1)関連性のある判例法
 1996年のMarkman v. Westview Instruments事件において、最高裁は、適切なクレーム解釈については、最終的に、陪審員ではなく裁判官により判断されるべき法的問題であるとしました。最高裁は、Markman事件において、上訴裁判所が事実審裁判所のクレーム解釈を尊重すべきであるかどうかについて意見を述べませんでしたが、CAFCは、Cybor事件において、Markman事件の最高裁判決に基づいて、クレーム解釈を上訴で再び見直すべきであるとしました。CAFCは、最近の別の判決において、CAFCの全裁判官出席の上で、クレーム解釈の判決を再び見直すという従来の方法を再確認しました。
(2)最高裁判決
 最高裁に提示された論点は、(最高裁がMarkman事件の判決で使用した表現である「証拠となる基盤」の検討を含むクレーム解釈として特徴づけた場合である)クレーム解釈が、クレームの用語について地方裁判所の判決の基礎となる補助的な事実の論争と関係がある場合、どのような判断基準が上訴に適用されるべきであるかということです。
 多数派は、連邦民事訴訟規則52(a)(6)を検討することにより分析を開始しました。本規則では、「明らかに誤りで」ない限り、控訴裁判所は地方裁判所の事実認定を除外すべきでないとあります。本規則の検討において、多数派は、本規則が補助的事実認定と最終的事実認定の両方に適用されると確認し、「証拠となる基盤」に関するクレーム解釈に対する本規則の適用について例外を認めないとしました。
 Markman事件では、特許クレームを解釈する上で、地方裁判所が認めた判決の基礎となる補助的な事実がある場合の見直しに関する規則52(a)(6)の例外は構成されませんでした。確かに、上記のように、Markman事件の判決では、クレーム解釈が「証拠となる基盤」の検討を含むものであり、補助的事実認定は必要であると認められました。
 従って、Markman事件は、規則52(a)(6)の例外を構成していません。
 Markman事件の判決では、(i) 特許クレームの解釈と、(ii) 契約書、権利証書等のような他の文書の用語の解釈とが類比され説明されました。Teva社に同意する多数派は、契約書における用語の意味についての係争が起こる場合、係争用語の意味を設定するため外的証拠を使用してもよい、またこの補助的事実認定に明らかな誤りがあるかどうか見直す必要があるとしました。多数派は、このような状況では、明らかな誤りがあるかどうか見直すことは、地方裁判所が対象特定技術に精通している必要がある特許ケースにおいて特に重要であるとしました。

[情報元]OLIFF SPECIAL REPORT, February 3, 2015
[担当]深見特許事務所 紫藤則和