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Alice最高裁判決の後、CAFCはインターネットによる広告方法を保護適格性がないと判示

 Ultramercialは、インターネットを通じて著作権で保護された製品を配信する特許を取得しました。特許された方法によれば、消費者が、広告を見る代わりに著作権で保護された製品を無料で受信し、広告主が、著作権で保護されたコンテンツに対して代金を支払うことが可能になります。
 Ultramercialは、本特許を侵害しているという理由で、Hulu、YouTube、およびWildTangentを相手にカリフォルニア州連邦地方裁判所(以下、地裁)に訴訟を提起しました。地裁は、本特許のクレームが保護適格性がないという理由で、WildTangentによる訴え却下の申立てを認めました。その後、CAFCは地裁の判断を破棄しました。これを不服として、WildTangentは最高裁に裁量上告しました。その直後に、最高裁は、Mayo v. Prometheus判決(以下、Mayo判決)を出し、本事件をCAFCに差し戻し、Mayo判決に基づいて本事件を審理し直すように命じました。Mayo判決に基づいて、CAFCは、再度地裁の判断を破棄しました。これを受けて、WildTangentが再度上告をしました。その直後に、最高裁は、Alice v CLS Bank判決(以下、Alice判決)を出し、本事件をCAFCに再度差し戻し、Alice判決に基づいて本事件を審理し直すように命じました。
 Alice判決では、以下の2つのステップに基づいて特許の保護適格性を判断しました。「第1ステップとして、クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであるか否かを判断する。クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであると判断した場合、第2ステップとして、クレームの構成要素(単独及び組合せとして)がクレームの本質を保護適格性のある応用に変換しているか否かを分析する。」
本事件において、第1ステップにおいて、CAFCは、本クレームが、通貨として広告を利用するという抽象的なアイデアに向けられたものであり、抽象的なアイデアであるという評価を避けるために、何らかの具体的または有形な形態を含んでいないと判断しました。CAFCは、ソフトウェアベースの特許のすべてのクレームが必ずしも抽象的なアイデアに向けられているわけではないが、本事件では、本クレームは抽象的なアイデアであると述べました。
 第2ステップにおいて、CAFCは、本クレームは、抽象的なアイデアを保護適格性を備える主題に変換する発明概念(Inventive Concept)を含んでいないと判断しました。CAFCは、本クレームの大部分のステップは、抽象的なアイデア自体に向けられたものであり、活動ログを更新したり、広告を視聴するために視聴者からのリクエストを求めるなどのような付加的なステップは、ありふれたもの(routine)であると述べました。CAFCは、活動ログのステップは、重要性のないデータ収集のステップであると述べ、抽象的なデータに実際的な意義を何も追加していないと判断しました。

[情報元]McDermott Will & Emery, IP Update, Vol. 17, No. 11, November 2014
[担当]深見特許事務所 西川信行