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先発明者先願主義の規則およびガイドライン

 2 月14 日、USPTO は、米国発明法(AIA)の先発明者先願主義(First Inventor To File)の規定を実施するための最終規則及び審査ガイドラインを発行しました。これらの規則等は2013 年3 月16 日に発効しました。

(1)背景
 AIA は、先発明主義から先発明者先願主義に移行する102 条及び103 条の抜本的な変更を行ないました。最終規則及びガイドラインの大きな変更は以下のとおりです。
・2013 年3 月16 日より前の優先権等の利益を主張する仮出願を特定するための陳述を削除しました。
・公開を前もって保護する証拠の提出についてのより柔軟なアプローチを提示しました。
・発明者の開示後の第三者による開示を先行技術から除外するための、保護される先の開示がほぼ同様であることの要件を明確にしました。
・USPTO が優先権書類交換プログラムの下で外国優先権出願の謄本を取り出すこと、若しくは外国優先権出願の正式ではない「暫定的」な謄本を提出することのいずれかによって、特定の期間内に外国優先権出願の認証謄本をUSPTO が受け取ったことの要件を満たすことを出願人に認めました。
・「秘密」の販売活動が102 条の先行技術を構成しないことにするUSPTO の解釈を提示しました。
(2)2013 年3 月16 日より前の優先権等の利益を主張する仮出願を特定するための陳述の変更
 最終規則は、外国の出願日の利益を主張する2013 年3 月16 日以降に提出された非仮出願、2013 年3 月16 日よりも前に提出された非仮出願若しくは仮出願が、2013 年3 月16 日以降に有効出願日を有するクレーム発明についてのクレームを有している場合には、出願人は、以下のより遅い期間内に、(そのような陳述が既に親出願で提出されていない場合には)その効果についての陳述をしなければならないことを要求しています。
・後に提出された出願の実際の出願日から4 ヶ月
・PCT 出願の国内段階への移行日から4 ヶ月
・先に提出された出願の出願日から16 ヶ月
・2013 年3 月16 日以降に有効出願日を有するクレーム発明について最初にクレームが出願で述べられた日
 しかし、USPTO は、クレームされておらず、先に提出された出願にも開示されていない主題を開示しており、2013 年3 月16 日よりも前に提出された非仮出願若しくは仮出願については、上記の陳述を提出しなくてもよいことにしました。
(3)102 条(b)の下での先行技術の例外に関する規則及び審査ガイドラインの変更
a)より柔軟なアプローチ
 以下で議論する点を除いて、規則は明確化および単純化されましたが、手続的要件および102 条(b)の先行技術の例外を行使するのに要求される申立につきましては実質的な変更はありません。一般に、USPTO によって提供されるメカニズムは、書証によって支持される事実の宣言であります。したがいまして、グレースピリオド期間内の主題の公開に関するプレ出願日の出来事または発明の主題の他人への伝達についての書証は、厳重に保護されるべきであります。
b)冒認手続(derivation proceedings)を遂行する選択肢
 主題が発明者または共同発明者に由来するものであることを主張する宣誓供述書または宣言書は、適用された米国特許または米国特許公開公報が拒絶された出願と同一または実質的に同一の主題をクレームしているときには、拒絶を克服するのに利用できないかも知れません。このような場合に、出願人は冒認手続のための陳述を提出することができます。最終規則は、もはや、そのような陳述を義務とはしていませんが、拒絶を克服するために他の手続(クレーム補正)を採ることを認めています。
c)中間開示を不適格化する早期の開示保護のための身元の要求レベルの明確化
 発明者または共同発明者によって事前に公表された主題(保護される開示)は、グレースピリオドに介在する開示と同一の主題を先行技術とはしません。その判断は、発明者によって公表された主題と、介在する開示の主題との比較によって行なわれ、クレームの発明の主題と、(a)発明者によって事前に公表された主題若しくは(b)それに引き続くグレースピリオドに介在する開示の主題との比較を含みません。
 審査ガイドラインは、仮に中間開示の主題が単に発明者または共同発明者によって事前に公表された主題の上位概念である場合には、中間開示の主題には例外が適用されることを述べています。
 また、最終規則は、開示保護は中間開示の逐語的な開示であることが要求されないことを明確にしており、発明者または共同発明者による開示の形態は、中間開示の形態と同一であることが要求されないことを明確にしています。
d)開示保護の存在の公衆への周知
 USPTO は、先行の公衆の開示の証拠を含む宣誓供述書または宣言書が、特許手続期間内に提出された場合には、審査官によるサーチを促進するために、USPTO が米国特許のカバーシートに情報を含めるであろうと述べました。
e)グレースピリオド期間内の出願人に起因する開示の例外を行使するための実施可能
 要件の説明の要求の削除発明者または共同発明者は、グレースピリオド期間内の出願人に起因する開示の例外を行使するために、クレームされた発明の実施可能要件を説明することが112 条(a)を満たすために要求されていましたが、その要求は削除されました。
(4)認証謄本要件の変更
 最終規則は、この要件を満たす2つの手段を新たに提示しました。
 第一に、(a)実際の出願日から4 ヶ月以内、若しくは(b)外国優先権出願の出願日から16 ヶ月以内に優先権書類交換プログラム(PDEP)の下での要求を提出すること、第二に、当該(a)または(b)の期間内に、出願人自身のファイルから「暫定的な」謄本を提出することです。これらの場合において、USPTO は、PDEP に参加している外国の知的財産庁から、外国出願の謄本、若しくは出願人によって提出された外国出願の認証謄本を当該出願の係属期間中であって、特許の発行前に受け取らなければなりません。出願人は、上記の期間内に認証謄本が手に入らない場合には、これらの手段を用いる必要はないとされています。また、認証謄本の遅れた提出は、遅れたことについての有効かつ十分な説明を含む請願書の提出とともに、$200 の請願料を支払うことによってのみ、許可されるとされています。
(5)「秘密」の販売活動が102 条の先行技術を構成しないこととするUSPTO の解釈
 最終の審査ガイドラインは、秘密の販売または使用の活動を規定する102 条(a)(I)の未解決の条項が先行技術としての適格性を有しないことを明確にしました。

[情報元]OLIFF & BERRIDGE, PLC SPECIAL REPORT February 19, 2013
[担当]深見特許事務所 赤木信行