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米国発明法(AIA)に基づく冒認手続の最終規則

 USPTOは、AIAの下で冒認手続を実施するための最終規則を発行しました。この規則は、2013年3月16日から有効となります。
 AIAにおいて創設された「先願主義」システムへの移行の一部として、先発明者を定めるインターフェアレンス手続は徐々に縮減され最終的に消滅します。以前、インターフェアレンスに関係しておりました135条は、USPTOの冒認手続を規定するように改正されました。改正された135条は、後願者が係属中の出願を有し、先願者は係属中の出願または発行された特許を有するという状況で適用されます。冒認手続では、先願者の特許出願の発明者が後願者の特許出願の1以上の発明者から発明を抽出して「権限なく」先願として出願したことを後願者が証明しようと試みます。
 USPTOは、冒認を構成するとの申請が年間50件程度提出され、それらのうち約10件のみが冒認を構成する結果になると想定しています。このように、冒認手続を規定する規則は非常に限られた出願に対してのみ関係すると予想されます。
【推奨】
(1)冒認手続を規定する規則において、インターフェアレンス手続に関する方針および規則の多くを適用しています。したがって、一般に、冒認手続の申請を求める当事者にとって、インターフェアレンス手続の申請を求めるのに用いられたのと同じ思考および戦略を適用することは有用です。
(2)後願者は、先願者のクレームを(複写されたクレームが後願者の出願に開示されている範囲で)直接複写する、および/または、後願者が発明したものを反映するのに必要な範囲で修正された先願者の出願を複写することができます。したがって、たとえ後願者が先願者の出願に気付く前に既に出願していたとしても、法定の1年の期間内であれば、後願者は分離した出願または現出願のCIPを考慮すべきです。これにより、後願者は申請に合うようにクレームの文言および開示をより良く調節することができます。
(3)冒認が疑われる場合、潜在的な後願者は先願者による全ての「出版物」すなわち(英語で出版されたか否かにかかわらず)公開された米国特許出願、発行された米国特許および公開された米国指定のPCT出願を監視すべきです。抽出されたクレームを含む公開されたPCT出願に対し、先願者が米国の国内段階の出願をしたことを確認できたか否かにかかわらず、後願者はPCT公開日の1年以内に当該申請を準備し提出しなければなりません。
(4)冒認手続は、共同ベンチャーという状況、または検査、市場調査もしくは資金の援助を得る努力の過程で当事者が他の当事者に発明を開示する状況において最も生じ得ます。これらの状況において、両当事者は、開示行為を裏付け可能な方法で非常に慎重に文書化すべきです。AIAも規則も裁判の制定前にいかなるディスカバリー機構も設けていないため、裁判が制定されるまで後願者は裏付けを与えるために先願者の資料に接近できません。
 裏付けの可能な形式は、(i)他者が証言でき、好ましくは他者によって日付入りの署名がなされた発明者ノート、(ii)出席者によって日付入りの署名がなされた会合の詳細な議事録に沿って発明が開示され議論される会合において非発明者の出席を書面化したノートまたはメモ、および(iii)紙または外部影響を受けない通信の電子記録を含みます。情報を受けた当事者は、受けた情報を注意深く書類化し、将来の冒認の申立に対する防御を準備すべきです。
(5)冒認は、ある状況において、共同発明よりも証明が困難になり得ます。もし冒認が証明できなければ、共同発明の証明に挑戦することも考慮すべきです。この選択肢は、その結果の特許の下、両当事者が共同所有するようにして自由に実施および許諾を与えられるとともに、他の当事者を潜在的に排除できるという効果を奏します。
(6)法定期限内に申請書を提出しなかった当事者または冒認手続の申請書をUSPTOによって拒絶された当事者は、付与後異議のような他の手続を考慮すべきです。
(7)特許対特許の状況では、135条に基づくUSPTOの冒認手続は利用できず、当事者は291条の民事訴訟を提起することができます。代替的には、特許権者は当該特許を再発行するための出願をして「出願人」となり、135条に基づくUSPTOの冒認手続を追及することができる可能性があります。この状況において、特許権者はどれを追及するかを決定する前に、各タイプの手続のそれぞれの利点を考慮すべきです。たとえば、135条の手続は、この分野の法律の経験および専門性を有するUSPTOに対して行なえるという利点があります。一方、291条の手続では、原告の冒認申立を支援する裁判前ディスカバリーの利点を提示すべきです。
(8)冒認手続は、最終的に成功するのが非常に難しく、他者による特許取得を阻止する信頼できる方法として見るべきではありません。先願主義システムの下での最良の手段は、完全な特許出願をできるだけ早く提出することであり、好ましくは、他の当事者へのいかなる開示よりも前に出願することです。

[情報元]OLIFF & BERRIDGE, PLC SPECIAL REPORT October 19, 2012
[担当]深見特許事務所 紫藤則和