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中国特許法の第3次改正に関するQ&Aについて

 さて、中国特許法の第3次改正が2009年10月1日に施行されました。またそれに伴いまして、改正実施細則および改正審査指南が2010年2月1日に施行されました。その中国特許法の第3次改正に関するQ&Aについて、下記の如くご報告申し上げます。
 なお、中国特許法の第3次改正の概要につきましては、2009年9月30日発行の弊所外国特許情報レポート「中国特許法の第3次改正について」をご参照下さい。
1.秘密保持審査について
Q1.中国で完成された発明又は実用新案を海外で出願(外国で直接特許出願または国外の関連機関に国際特許出願)する場合、事前に秘密保持審査を請求する必要がありますが(特許法第20条)、秘密保持審査の請求の方法にはどのような方式がありますか?
Q2.秘密保持審査の手順はどのようなものですか?
Q3.秘密保持審査の請求後に出願人はどのように対応すればよいですか?
Q4.秘密保持審査を受けずに、中国で完成された発明又は実用新案を海外で出願した場合、どのようなペナルティがありますか?
2.同一発明創造についての同日の特許出願と実用新案出願について
Q5.同一出願人が同一発明創造について同日に特許出願と実用新案出願とをできることが特許法第9条に規定されていますが、出願人はどのような手続をする必要がありますか?
3.同一出願人による拡大先願について
Q6.第3次改正における特許法第22条第2項により、同一の出願人が先に提出した中国出願も、後に提出する中国出願の拡大先願になることが規定されましたが、後の中国出願がパリ条約の優先権主張を伴う場合、特許法第22条第2項の規定は優先日を基準に判断されるのでしょうか、それとも実際の中国出願日を基準に判断されるのでしょうか?
Q7.後願の中国出願の優先日が第3次改正の施行日(2009年10月1日)前で、実際の中国出願日がその施行日後の場合、その後願の中国出願には第3次改正における特許法第22条第2項が適用されるのでしょうか、それとも第3次改正前の特許法第22条第2項が適用されるのでしょうか?
Q8.上記A6およびA7を具体的に説明して下さい。
4.意匠特許の出願の際の意匠の概要説明などの文書の提出について
Q9.第3次改正における特許法第27条により、意匠特許出願には当該意匠の概要説明を提出しなければならなくなりましたが、その意匠の概要説明には具体的にどのようなことを記載すればよいのでしょうか?
5.意匠の合併出願について
Q10.第3次改正における特許法第31条により、同一製品の複数の類似意匠を1件の出願として提出できるようになりましたが、何件の意匠を含ませることができますか?
 また複数の意匠を1つの出願として提出する場合に注意すべきことはありますか?ここに含まれる情報は一般的な参考情報であり、法的助言として使用されることを意図していません。従って、IP 案件に関しては弁理士にご相談下さい。

1.秘密保持審査について
Q1.中国で完成された発明又は実用新案を海外で出願(外国で直接特許出願または国外の関連機関に国際特許出願)する場合、事前に秘密保持審査を請求する必要がありますが(特許法第20条)、秘密保持審査の請求の方法にはどのような方式がありますか?
A1.秘密保持審査の請求の方式には、主に以下の3つの方式があります(実施細則第8条)。
(1)海外に第1国出願を行う場合、事前に国務院専利行政部門(中国の専利局)に秘密保持審査請求書を提出し、技術方案について詳細な説明を行う必要があります。
(2)中国に第1国出願をした後に、海外に出願する場合、海外での出願前に国務院専利行政部門に秘密保持審査請求書を提出する必要があります。
(3)国務院専利行政部門に国際特許出願をした場合には、同時に秘密保持審査の請求をしたものとみなされます。
Q2.秘密保持審査の手順はどのようなものですか?
A2.秘密保持審査の手順は以下のように行われます(実施細則第9条)。
 国務院専利行政部門は、秘密保持審査請求書を受領した後、当該発明又は実用新案が国家の安全又は重大な利益に関わり、秘密を保持する必要があるか否かについて審査を行います。
 国務院専利行政部門は、秘密を保持する必要があると認めた場合には、速やかに出願人に秘密保持審査の通知を発行しなければなりません。
 国務院専利行政部門は、上記の通知に基づき秘密保持審査を行う場合、秘密保持の必要があるか否かの決定を速やかに下し、出願人に通知しなければなりません。
Q3.秘密保持審査の請求後に出願人はどのように対応すればよいですか?
A3.出願人は以下のように対応することができます(実施細則第9条)。
出願人は、以下の①または②の場合、当該発明又は実用新案について海外で出願を行うことができます。
① 秘密保持審査の請求の提出日から4ヶ月以内に秘密保持審査の通知を受領しなかった場合
② 秘密保持審査の請求の提出日から4ヶ月以内に秘密保持審査の通知を受領したが、その提出日から6ヶ月以内に決定を受領しなかった場合
Q4.秘密保持審査を受けずに、中国で完成された発明又は実用新案を海外で出願した場合、どのようなペナルティがありますか?
A4.秘密保持審査を受けずに、中国で完成された発明又は実用新案を海外で出願した場合、その海外で出願した発明又は実用新案について中国で出願すると、その中国出願について特許権は付与されません(特許法第20条第4項)。
このような特許法第20条第1項違反は、拒絶理由(実施細則第53条(2))または無効理由(実施細則第65条第2項)となります。

2.同一発明創造についての同日の特許出願と実用新案出願について
Q5.同一出願人が同一発明創造について同日に特許出願と実用新案出願とをできることが特許法第9条に規定されていますが、出願人はどのような手続をする必要がありますか?
A5.出願人は、出願時に、特許出願と実用新案出願とのそれぞれの請求書において他方の専利を同時に出願していることを説明する必要があります(実施細則第41条)。この説明がない場合には、特許出願および実用新案出願のいずれか1つの出願が拒絶されます(実施細則第41条)。
 また先に実用新案権を取得した場合であって、その後に特許出願について発明特許権を取得する場合には、その実用新案権が終了する前にその実用新案権の放棄を宣言する必要があります(特許法第9条第1項)。
 国務院専利行政部門は、発明特許の出願審査で拒絶理由が見つからない場合、指定期限内に実用新案権を放棄するよう出願人に通知する必要があり、出願人が放棄に同意しない場合には特許出願は拒絶され、出願人が指定期限内に回答しない場合には特許出願は取り下げられたものとみなされます(実施細則第41条)。

3.同一出願人による拡大先願について
Q6.第3次改正における特許法第22条第2項により、同一の出願人が先に提出した中国出願も、後に提出する中国出願の拡大先願になることが規定されましたが、後の中国出願がパリ条約の優先権主張を伴う場合、特許法第22条第2項の規定は優先日を基準に判断されるのでしょうか、それとも実際の中国出願日を基準に判断されるのでしょうか?
A6.優先日を基準に判断されます(実施細則第11条)。
 なお先の中国出願が優先権の主張を伴う場合には、特許法第22条第2項の規定の適用に関して、先の中国出願も優先日を基準に判断されます(実施細則第11条)。
Q7.後願の中国出願の優先日が第3次改正の施行日(2009年10月1日)前で、実際の中国出願日がその施行日後の場合、その後願の中国出願には第3次改正における特許法第22条第2項が適用されるのでしょうか、それとも第3次改正前の特許法第22条第2項が適用されるのでしょうか?
A7.第3次改正前の特許法第22条第2項が適用されます(「改正特許法の施行に伴う経過措置」の第2条)。このため、上記後願の中国出願が、同一出願人の先願の中国出願を拡大先願として拒絶されることはありません。
Q8.上記A6およびA7を具体的に説明して下さい。
A8.以下の表に示した事例について説明します。

 特許法第22条第2項の規定の適用について、後願である中国出願B’は優先日(2009年9月1日)を基準に判断されます。この優先日は第3次改正の施行日(2009年10月1日)前ですので、第3次改正前の特許法第22条第2項が適用されます。このため、後願の中国出願B’は先願の中国出願Aを拡大先願として拒絶されません。

4.意匠特許の出願の際の意匠の概要説明などの文書の提出について
Q9.第3次改正における特許法第27条により、意匠特許出願には当該意匠の概要説明を提出しなければならなくなりましたが、その意匠の概要説明には具体的にどのようなことを記載すればよいのでしょうか?
A9.意匠の概要説明の必須記載事項は次のとおりです(実施細則第28条)。
① 意匠製品の名称
② 意匠製品の用途
③ 意匠のデザインの要点
④ デザインの要点を最もよく表している図面又は写真を指定する
 なお同一製品中の複数類似する意匠をまとめて1件として意匠特許出願をする場合、概要説明の中に1つを選んで基本デザインとして指定しなければなりません。
 また概要説明には商業的な宣伝用語を使用してはならず、また製品の性能の説明に用いることもできません。

5.意匠の合併出願について
Q10.第3次改正における特許法第31条により、同一製品の複数の類似意匠を1件の出願として提出できるようになりましたが、何件の意匠を含ませることができますか?
 また複数の意匠を1つの出願として提出する場合に注意すべきことはありますか?
A10.1件の意匠特許出願に10件までの類似意匠を含ませることができます(実施細則第35条第1項)。
 2つ以上の意匠を1つの出願として提出する場合には、各意匠の通し番号を各意匠製品の各図面、又は写真の名称の前に注記する必要があります(実施細則第35条第2項)。

以上