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特許権者による販売は、販売場所もしくは制限にかかわらず特許権 を消尽させるとした最高裁判決

 米国最高裁は、Impression Products v. Lexmark International 事件において、製品を販売するという特許権者の決断は、販売場所もしくは特許権者が強要するいかなる制限にかかわらず、当該製品の特許権のすべてを消尽させるとの判決を下しました。判決は、(1)製品を使用または再販売する購入者の権利を明確に制限した上で製品を販売することにより特許権者は消尽論を回避し得る、(2)製品を海外で販売するとき特許権者は米国特許の下では特許権を消尽しない、とのCAFC の判例法を覆しました。
 CAFC の判決は、2008 年のQuanta 事件および2013 年のKirtsaeng 事件で表明された知財消尽に対する最高裁の最近の権威に対して緊張を与えていたため、今回の結果は予想外のものではありません。
 今回の最高裁判決は、世界市場における特許部品の購入が製造者および許諾者の特許権を消尽させるかどうかという大きな不確実性を取り除いたため、多くの産業、特に電子産業の関係者によって評価されるでしょう。これらの購入者は、今回の判決を喜びを持って受入れ、「最初の販売を超えた特許権の拡張は、特許権者が保持する余分な統制がもたらすわずかな利益と引き換えに、商取引の経路を詰まらせるだろう」という最高裁の知見に同意するでしょう。
 一方、今回の最高裁判決は、製薬産業等での特化された下流許諾モデルに強い関心を持つ企業には問題となり得ます。使用分野の許諾の周辺で構築された許諾モデルは、指定された分野内での承諾の下で被許諾者によって販売された製品が下流の権限の及ばない他の分野で使用または再販売されるのをいかに防ぐかという課題に直面しています。
 最高裁判決は、消尽論は絶対であり、侵害の救済はこのような下流の購入者には有効でないが、分野制限の違反に対する契約上の救済の可能性は残っていることを示唆しています。特許権者または許諾者と契約上の当事者の関係にない下流の購入者にそのような制限をうまく強要する適切な契約上の制限および仕組みを設けることは、商取引の創造性および規律を必要とするでしょう。

[情報元]Morrison & Foerster, Client Alert, May 30, 2017
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和