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『視覚的に無視できる』は不明確ではない

 CAFC は、明細書が視覚的に無視できるインジケータの例を記載している等の理由から、「視覚的に無視できる」とのクレーム用語が不明確であるという地裁判決を取消し、審査官も専門家も、当該用語の範囲を定めるのに明らかな困難はないと結論付けました(Sonix Technology v. Publications International )。
 特許明細書は、オブジェクト表面上の情報をエンコードする「グラフィカルインジケータ」を用いるためのシステムおよび方法について記載しています。発明者は、オブジェクト表面上の情報をエンコードすること自体は新規でないと認識しています。特許明細書は、グラフィカルインジケータの従来例としてバーコードを挙げていますが、当該グラフィカルインジケータを視覚的に無視できるようにすることにより、従来の方法から改善されたと主張しています。
 地裁において、原告(Publications International)の専門家は、「視覚的に無視できる」は観察者の視覚に依存しているため、普遍的な基準となり得ないと主張しました。この証言に基づき、地裁は、「視覚的に無視できる」とのクレーム用語は不明確であり、特許権は無効であると判断しました。被告(Sonix Technology)は、これを不服としてCAFC に控訴しました。
 CAFC は、通常の人間の視覚に基づいて何が視覚的に無視できるかを判断する客観的なベースラインがあるため、「視覚的に無視できる」との用語は、完全に主観的ではないと述べました。また、CAFC は、特許明細書が視覚的に無視できるインジケータの2つの例を挙げている事実を取上げました。また、CAFC は、再審査の手続において、クレーム用語の範囲を定めるのに明らかな困難を示した者はいなかったと述べました。これらの理由に基づき、CAFC は、上記のクレーム用語は不明確ではないと判断し、地裁の判決を取消しました。

[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 20, No. 2
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和