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(英国)Actavis v Lilly英国最高裁判決後の均等論の適用

 Actavis v Lilly最高裁判決(外国知財情報レポート 2017-秋号 参照)において、英国特許法に均等論および限られた形での包袋禁反言の法理が導入されました。この判例法が、Generics v Yeda事件、L’Oreal v RN Ventures事件、およびFisher & Raykel v Resmed事件に適用されています。
 Activas判例法によると、変形例(variant)を考慮する前に、クレームの「文言上の」または「通常の」意味が決定されることが必要とされます。Generics v Yeda事件では、「通常の解釈」とは、文字通りの解釈ではなく目的にかなう解釈の問題であると理解されました。同じアプローチが、L’Oreal v RN Ventures事件、およびFisher & Raykel v Resmed事件に適用されました。
 Activas判例法によると、許可前のクレームの範囲と許可後のクレームの範囲との間には明らかな不均衡があります。Generics v Yeda事件では、クレームを文言侵害しないが後の訴訟手続において均等侵害であるとわかった先行文献に関する問題が論じられました。この判決では、「通常の解釈」のもとでは、新規性の評価には均等論が適用されないことが確認されました。
 L’Oreal v RN Ventures事件では、争点である構成が特許と実質的に同じ方法で同じ効果をもたらすことは明白である、しかしながら、特許権者は明細書中においてその変形例について詳細に論じており、クレームからその変形例を除外することを選択した、との結論が下されました。この判決では、通常の知識を有する読者であれば、特許権者は何らかの理由でその変形例を除外することを意図したと推測するであろうし、したがって、Activas判例法の第3の質問に照らしてその変形例は均等ではない、と結論付けられました。
 包袋禁反言について、RN Venturesは、出願経過においてL’Orealは進歩性の議論のためにクレーム1を限定したことから、Activas判例法の「出願経過を無視することが公共の利益に反する」事情が適用される、と反論しました。判決では、出願経過の参酌は例外であって決まりごとではないことが強調されて、RN Venturesの反論は認められませんでした。

[情報元] D Young & Co. Patent Newsletter no. 65
[担当]深見特許事務所 村野 淳