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(ドイツ)範囲指定に関する優先権

 ドイツ連邦最高裁による優先権に関する判決(X ZR 112/13 – Teilreflektierende Folie)についてご紹介します。
 対象の本特許は、舞台(劇場の舞台)で架け渡される反射箔上に画像を投影する方法に関するEP特許のドイツ部分です。本出願の先の出願(優先権の基礎出願であるドイツ実用新案)は、係争中である本出願が提出される前にすでに公開されていたため、本出願の特許性は、優先権主張の有効性の問題に依存していました。
 本出願のクレーム1の特徴は、反射箔が少なくとも3m×4mの寸法を有していることでした。この面積の範囲指定は、本出願の先の出願には開示されていませんでした。そのため、連邦特許裁判所は、この特徴については優先権主張の利益を享受できないとして、新規性欠如により第一審において特許を取消しました。
 しかしながら、連邦最高裁に対する訴えは、特許権者にとって意外な成功をもたらしました。
 連邦最高裁によれば、先の出願において寸法表示が欠如していても、様々なサイズの金属箔の使用が開示されていないという結果にはならないとのことです。先の出願は、概して、舞台(ここでは、劇場の舞台)に言及していたため、一般的な舞台、したがって、小さい舞台から大きい舞台まで、広範囲にわたる舞台が開示されていました。
 そして、連邦最高裁は、範囲指定(そのような範囲指定であっても)を含む先の出願の優先権は、次のような場合には有効に主張されると結論付けました。すなわち、後の出願においてクレームされ、この範囲指定内にある個々の値または部分的な範囲が、発明の実施可能な形態として先の出願において開示されている場合には、当該優先権は有効に主張されるとしました。
 このことは、ある範囲が開示されていれば、この範囲内のあらゆる個々の値それ自体が自動的に開示され、ゆえに部分的な範囲をも開示されるという立場を連邦最高裁がとっていることを意味します。ただし、連邦最高裁のこの見解は、欧州特許庁の見解とは全く逆である点には留意すべきです。

[情報元]Bockhorni & Kollegen UPDATE Ed. 1/2016
[担当]深見特許事務所 勝本 一誠