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(英国)英国政府が「合意無きBrexit」への指針を示す

 英国政府は、2018年9月24日に、英国が2019年3月に「合意無く」欧州連合(EU)を離脱した場合に知的財産権がどのような影響を受けるかについての指針を公表しました。
 英国の特許権、ならびに、統一特許裁判所および単一特許への英国の関わりについて、英国政府は、Brexit前の状況をそのまま維持しようとしています。英国内の欧州特許弁護士はEPOに対しての代理権を引続き有すると英国政府は明示しており、EPOもこれを確認しています。
 統一特許裁判所および単一特許が2019年3月29日までに発効しなかった場合、英国がEUを離脱した時点では何も変わりません。一方、統一特許裁判所が発効したときに英国が統一特許裁判所および単一特許制度からの離脱を求められるのかどうか、現時点では明らかではありません。完全に離脱することを求められる場合、英国企業は、英国内における発明の保護に統一特許裁判所および単一特許制度を用いることができなくなるでしょう。英国では、欧州特許出願の登録査定後に英国内で有効化するという現状が維持されることになります。但し、他のEU諸国内における発明の保護に統一特許裁判所および単一特許制度を用いることは可能でしょう。2019年3月末までに統一特許裁判所が発効する可能性は低いと思われますが、その場合英国政府は、既存の単一特許に相当する英国での権利が自動的に発生することを明示しています。
 バイオテクノロジー特許に関する指令(EU Biotech Directive)について、英国政府は、2019年3月以降も維持されることを提案しています。したがって、バイオテクノロジー発明を特許にするための法的要件、審査の基準、無効理由などは、現状のままとされるでしょう。
 補充的保護証明書(SPC)についても英国政府は、2019年3月以降も維持されることを提案しています。したがって、既に英国内で有効であるSPCおよびライセンスは2019年3月以降も維持されますし、新たにSPCを取得する過程も実質的に同じでしょう。特許権の存続期間満了後の製造販売を目的とする後発医薬の承認申請のための試験が特許権の侵害に該当しないとする条項(EU Bolar)も維持されるでしょう。
 知的財産権により保護された製品が、欧州経済領域(EEA)内で正当な権利者によって、または権利者の同意の下で、販売された場合には、当該知的財産権は2019年3月以降においても英国内において消尽したものとみなされます。したがって、EEA内から英国への並行輸入は引続き可能です。一方、英国内で正当な権利者によって、またはその同意の下で製品が販売された場合には、EEA内において権利が消尽したものとはみなされません。したがって英国からEEAへ製品を輸出しようとする場合には、権利者の同意が必要になります。

[情報元]D Young & Co. Patent Newsletter no. 67, October 2018
英国政府ウェブサイト
[担当]深見特許事務所 村野 淳