国・地域別IP情報

斬新であると言い換えられた抽象アイデアも依然抽象的である

 概要
 101条の下での主題適格性に対する分析を精査する事件において、CAFCは、抽象的と特定されたものを斬新な特徴と言い換えても、Alice/Mayo適格性分析の第2ステップを満たすのに十分ではないと判示しました。

 背景
 BSG Tech社は、幅広いアクセスのデータベースに保存された情報を索引付けるためのシステムおよび方法に関するいくつかの特許の侵害についてBuySeasons社を訴えました。BuySeasons社は、当該特許のクレームがいずれも101条の特許適格性を有さないと議論して、棄却を求めました。地裁は全てのクレームが101条の適格性を有さないため無効と判断し、BSG Tech社は控訴しました。
 CAFCは、BSG Tech社によって自己進化データベースに関すると特徴付けられるクレームが「データ入力中に使用履歴情報を考慮する抽象アイデアを対象として」おり、特許適格性を有さないという地裁の判断に同意しました。
 Alice/Mayo分析の第2Aステップ(クレームが特許不適格な概念を対象としているか判定する)を適用するに際し、CAFCは、項目データを一連のパラメータおよび値として使用者の入力を可能とするクレーム記載のデータベース構造が、発明時に一般に用いられていたと当該特許の明細書に記載されていると述べています。したがって分析は、DDR Holdings v. Hotels.comの特許適格性事件で見られたように、クレーム方法が、幅広いアクセスのデータベース「の領域で具体的に生じる課題を解決するためにコンピュータ技術に必然的に根差している」かどうかに焦点が絞られました。
 CAFCは、クレーム発明が、データベースに加えられる情報の質およびデータベースにおける情報の組織化を改善するというBSG Tech社の議論は説得力がないとしました。なぜなら、議論された利益は、データベースの機能性を改善せず、「周知のデータベース構造と連動して抽象アイデアを実施することから生じる」に過ぎないためです。加えて、CAFCは、「我々は、クレームが汎用コンピュータより具体的な構成要素を記載しているという理由だけから、クレームが抽象的でなくなるという訳ではないと一貫して主張している。」と述べています。
 いかなるタイプの使用履歴情報よりも「要点比較使用情報」を考慮するよう使用者に要求する限定に関し、CAFCは、「クレームは狭い意味で抽象アイデアに当てはまるとの理由だけから、クレームには特許適格性がない。」と指摘し、クレームが抽象的であることを免れるデータベース機能の改善を構成するものはないと述べています。
 Alice/Mayo分析の第2Bステップ(クレームが第1ステップで特定された抽象アイデアを遙かに超える記載をしているかどうか)の考慮に際し、CAFCは、データベースの機能性にクレーム上の改善は見られないと述べました。BSG Tech社は、クレームに記載された発明は、要点比較使用情報の表示を通じて分類、パラメータおよび値の選別を導くことにより、データベースに加えられる情報の質およびデータベースにおける情報の組織化を改善すると議論しました。
 CAFCは、これらはデータベース機能の改善ではなく、周知のデータベース構造と連動して抽象アイデアを実施することから生じる利益に過ぎないと述べました。CAFCは、「Alice判定において適格性のない概念を対象とするクレームに記載の発明の使用は、不適格概念を『遙かに超える』発明にする発明概念を与えることはできない」ため、それは明らかであると結論づけました。

[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 21, No. 9
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和