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「Configured to」か「Capable of」か、それが問題だ

概要
 装置クレームは特許できないが方法クレームはこの限りでないというPTABのIPR決定に対し、CAFCはPTABの決定を支持しました(ParkerVision, Inc. v. Qualcomm Inc., Case Nos. 2017-2012, -2013, -2014, -2074 (Fed. Cir. Sept. 13, 2018))。
内容
 Qualcommは、低周波信号を高周波数に変換するための装置および方法に関するParkerVisionの特許に対して3つのIPRを請求しました。第1および第2の請求は、装置クレームおよび方法クレームの両方を対象としており、第1の組の先行技術に基づいています。第3の請求は、他の装置クレームを対象としており、第2の組の先行技術に基づいています。PTABは、3つすべての請求について審理しました。
 ParkerVisionは、最初の2つのIPRにおいて、先行技術は単一の高調波を有すると明示的に記載しているのみなので「複数の高調波」とのクレーム文言を充足していないと答弁しました。Qualcommは、先行技術では特定の周波数に対して複数の高調波が必然的に生じると応答しました。PTABは、先行技術は複数の高調波を有することが可能なため、装置クレームは自明であると結論づけました。一方、PTABは、Qualcommは複数の高調波を得るために先行技術を実際に用いる動機付けを示していないため、方法クレームは同じ先行技術に対して特許性を有すると述べました。両当事者は、この決定に対してCAFCに共に上訴しました。
 上訴において、CAFCは、PTABの決定を支持しました。CAFCは、クレームが侵害構成を要求するように記載されているのか、機能を実施する可能性を記載しているに過ぎないのかを考察しました。CAFCは、「高周波数に変換する“ための”装置」および「一連のパルスを“受信するための”切替モジュール」を記載した前段の文言に基づき、クレームが可能性を記載していると判断しました。PTABの決定を考慮し、CAFCは、先行技術はクレームに記載された複数の高調波に到達することが可能であることから、当該先行技術により装置クレームは自明であると結論づけました。
 一方、方法クレームに対し、CAFCは、クレームに記載された方法をたまにしか用いない先行技術は、当該方法の教示であるに過ぎず、当業者が当該教示を採用する理由によって裏付けられている必要があると結論づけました。CAFCは、Qualcommは立証責任を果たしていないという点でPTABに同意し、方法クレームは特許性を有するという決定を支持しました。

[情報元]McDermott Will & Emery IP Update Vol. 21, No. 10
[担当]深見特許事務所 深見特許事務所 紫藤 則和