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USPTOによる「AIと知財政策に関するパブリックコメント」の報告書

 米国特許商標庁(USPTO)は、2020年10月6日に、「Public Views on Artificial Intelligence and Intellectual Property Policy」と題する報告書を発表しました。USPTOは、AI関連発明の特許保護と、特許以外の知財政策へのAIの影響についてのパブリックコメントを募集しました。報告書は、約200の回答を分析し、整理したものです。報告書には、次のような意見が含まれています。
・大多数の意見は、AIには普遍的に認められた定義がない、現在のAIは「狭義のAI」に限定される、人間の知能に類似する人工一般知能(AGI: artificial general intelligence)は、まだ到来していないというものです。
・大多数は、現在の米国の知的財産法は、現在のAI関連発明に対して十分な保護を提供しているとの見解を示しました。ただし、AI関連発明に対処するための新しい知的財産権の必要性について意見が分かれました。新しい知的財産権を求めている人のほとんどが、AIに関連するデータの保護の必要性に言及しています。「大量のデータを収集した会社は、市場への新規参入者よりも競争優位性を有する。大きなテクノロジー企業によって収集されたデータのレポジトリへのアクセスを提供するメカニズムがあるはずである。そのようなメカニズムにおいて、データの知的財産権が保護される一方、新規参入者は、そのようなデータを使用して、AIを学習させることができる。」というコメントがありました。
・大多数は、現時点では機械ではなく人間が発明者でなければならないということに同意しました。大多数は、譲渡を通じて自然人または企業のみが特許の所有者とみなされるべきであることに同意しましたが、少数の人は、特許の所有権をAIプロセスを訓練する、またはAIシステムを所有または制御する自然人にまで拡大すべきであると述べています。
・大多数は、AI関連発明は、他のコンピュータ実装発明と同様に取扱われるべきであると考えています。
・大多数は、AIが、当業者のレベルに影響を与える可能性を指摘しています。「試験管が、化学の分野の当業者のレベルに影響を与え、汎用のコンピュータが、ソフトウェア分野の当業者のレベルに影響を与えたように、AIが、AIが利用される分野における当業者のレベルに影響を与えるであろう」というコメントがありました。
・大多数は、現在の知的財産法は、著作権、商標、企業秘密およびデータ分野において、正しく調整されていると述べています。多くの人は、AIの進歩の結果によって生じる知的財産法の隙間は、既存のビジネス法の原則で十分に埋めることができると考えています。
 USPTOは、この報告書を利用して、AIなどの技術の知的財産権の理解および信頼の強化のために取り得る手段の検討を続けるとしています。

[情報元]USPTOウェブサイト[1]
[担当]深見特許事務所 西川 信行

[1] https://www.uspto.gov/sites/default/files/documents/USPTO_AI-Report_2020-10-05.pdf