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医薬品等の存続期間延長登録出願規定上の薬効の意味を広く解釈して存続期間延長登録対象を拡大した特許法院判決の紹介

 特許法院は、韓国特許施行令第7条第1項の「薬効」の意味を広く解釈して、特許審判院の存続期間延長登録出願の拒絶決定を支持する審決を取り消しました(特許法院 2021年9月30日宣告2020ホ4129審決取消訴訟)。

1.事件の経緯
(1)原告(Biogen MA Inc.)は、ペグインターフェロンベータ-1aを有効成分とし、再発性多発性硬化症の治療を用途とする医薬品(以下‘本件医薬品’とする)の品目許可を受けました。
(2)原告は、本件医薬品の品目許可を受けるまでに85日かかったことを理由に、被告(特許庁)に対し特許権の存続期間延長登録出願をしました。
(3)しかし、特許庁審査官は、本件医薬品を、それ以前に許可されたインターフェロンベータ-1aを有効成分とする再発性多発性硬化症治療剤と比較し、適応症と治療効果を示す活性部分において同一なので、「本件医薬品は、延長登録出願対象として規定されている“新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質)を有効成分として製造した医薬品として最初に品目許可を受けた医薬品”に該当しない」として延長登録拒絶決定を行いました。
(4)原告は、特許庁審査官による延長登録拒絶決定を不服として特許審判院に審判を請求しました。
(5)しかし、特許審判院は、上記(3)と同様の理由により、特許庁審査官による延長登録拒絶決定を支持する審決を行いました。
(6)原告は、特許審判院の当該審決の取消しを求めて特許法院に審決取消訴訟を提訴しました。

2.特許法院の判断
 韓国特許施行令第7条第1項の「薬効」は適応症だけに限定されるものではなく、「医薬品の成分中に内在する薬理作用により特定の疾病を診断・治療・軽減・処置又は予防する効果」をも意味する。
 ペグインターフェロンベータ-1aは、インターフェロンベータ-1aとは異なる生物学的活性及び薬物動態学的特性があり、この違いが結果的に再発性多発性硬化症の治療効果の増大につながっている。この違いは全てインターフェロンベータ-1aにPEG(ポリエチレングリコール)が結合されることでもたらされるものであるため、ペグインターフェロンベータ-1aは活性部分として認められなければならない。したがって、本件医薬品は、韓国特許施行令第7条第1項の規定が定める延長登録出願発明に該当する。

3.実務上の留意事項
(1)本特許法院判決により、韓国特許施行令第7条第1項の「薬効」の意味がより明確となりましたので、韓国において特許権の存続期間の延長登録出願をする際には参考になる判決であると考えます。
(2)韓国特許施行令第7条第1項は、特許権の存続期間の延長登録出願対象発明に関して、以下のように規定しています。
「1.特許発明を実施するために「薬事法」第31条第2項・第3項または第42条第1項により品目許可を受けた医薬品[新物質(薬効を示す活性部分の化学構造が新しい物質をいう。以下、この条で同じ)を有効成分とし製造した医薬品として最初に品目許可を受けた医薬品に限定する]または「麻薬類管理に関する法律」第18条第2項または第21条第2項により品目許可を受けた麻薬または向精神薬(新物質を有効成分として製造した麻薬または向精神薬として最初に品目許可を受けた麻薬または向精神薬に限定する)の発明」
(3)本特許法院判決に類似して、ナルフラフィン(フリー体)、ナルフラフィン塩酸塩のいずれが有効成分であるかについて争われた日本国における知財高裁の裁判例(令和2年(行ケ)第10063号 審決取消請求事件(令和3年3月25日判決言渡)等)も参考になるかも知れません。

[情報元]
① Lee International IP News Alerts, November 2, 2021, 「存続期間延長に関する特許法院判決の紹介(2020ホ4129)」
② 韓国特許施行令(JETRO韓国ホームページ(https://www.jetro.go.jp/world/asia/kr/ip/)
③ 日本国知財高裁判決(令和2年(行ケ)第10063号 審決取消請求事件(令和3年3月25日判決言渡))

[担当]深見特許事務所 赤木 信行