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仮想商品に対する審査指針

 仮想空間において使用・取引される商品についての商標権保護への関心が高まる中、実際に関連商標出願も多数行われている状況ですが、これまで韓国には仮想商品に関する商品表示やそれに対する審査規定が存在していませんでした。このため、韓国特許庁では仮想商品の表示の認定基準と類似判断に関する審査指針を策定し、2022年7月14日付で施行すると発表しました。

1.韓国特許庁で認められる仮想商品関連指定商品/役務名称
 これまでは仮想商品に関する商品表示が商品細目になかった関係で、仮想空間で使用又は取引される商品などに対する商標権確保のために、例えば「ダウンロード可能な衣類製品イメージファイルやコンピュータプログラム」等の商品表示を指定して商標出願が行われていましたが、今後は「仮想衣類」、「仮想靴」のように「仮想+現実商品名」からなる名称が韓国特許庁で認められることとなり、より直接的に仮想商品に対する権利確保が可能になりました。
 ただし、「仮想商品」という表示自体は、包括名称であって認容されません。具体的に認められる、又は、認められない指定商品/役務表示の例は下記の通りです。

No.

区分

指定商品/役務名称の例示

認否

1

9

仮想衣類が記録された仮想世界ゲーム用コンピュータプログラム

2

9

仮想製品すなわちオンライン仮想世界で使用する靴

3

9

ダウンロード可能な仮想衣類

4

35

ダウンロード可能な仮想衣類オンライン小売業

5

35

メタバースを利用した家具販売代行業

6

35

仮想世界における広告代行業

7

41

仮想環境を利用した音楽公演業

8

9

ダウンロード可能な仮想商品

不可

 

2.仮想商品に関連する類似判断基準
 今回の審査指針では、仮想商品間、又は、仮想商品と現実の商品間の類似判断に対する基準も提示されました。具体的には下記のように、①仮想商品間の類似判断はその対象となる現実の商品間の類否と同様に判断されます。さらに、②仮想商品及び現実の商品間は、関連審決例・判例の形成前までは非類似商品として審査されます。ただし、③周知著名な商標が結合し仮想商品及び現実の商品間に出所の誤認混同のおそれがある場合には、周知著名商標の保護規定に基づいて拒絶するよう規定されています。

 

比較対象

具体例

類否

備考

仮想商品

仮想ズボン vs 仮想衣類

類似

現実の商品であるズボンと衣類は類似するため、各仮想商品間も類似と判断

仮想保護ヘルメット

vs

仮想衣類

非類似

現実の商品である保護ヘルメットと衣類は非類似であるため、各仮想商品間も非類似と判断

仮想商品と

現実の商品

仮想靴 vs 靴

非類似

仮想商品と現実の商品は非類似と判断

 

3.日本企業が取るべき措置
 今回の韓国特許庁の新たな審査指針において注目すべき点は、①「仮想商品」という新しい商品細目が新設され類似群コードも新たに付与されたという点、そして、②このような仮想商品と現実の商品は類似商品とみなされないという点です。
 したがって、すでに韓国に登録されている商標権があるとしても、当該権利では新しい仮想商品に関連する商品及び役務に対する権利行使は制限される可能性があり、併せて仮想商品に関連する区分についての第三者の出願も、先登録に基づいて阻止することができなくなる可能性が高いという点に留意する必要があります。
 このような権利保護の空白を埋めるためには、仮想商品に関連する商品及び役務について新たに権利を確保しておくことが望ましく、個人/企業を問わず迅速かつ積極的な対応が必要と考えられます。

 

[情報元]KIM & CHANG IP Trademark/Design Legal Updates | Korea (2022.7.14)
[担当]深見特許事務所 原 智典