USPTO、外国籍の特許出願人に米国特許実務家による代理を義務化へ
米国特許商標庁(USPTO)は、外国に住所を有する(外国籍の)特許出願人および特許権者に対し、登録された米国特許実務家(弁護士・弁理士)による代理を義務付ける最終規則を採択し、2026年3月20日発行の官報で公表しました(91 Fed. Reg. 13510)。この最終規則は、米国特許法施行規則第1章(37 C.F.R. Part 1)の種々の条文の改正からなり、制度の調和、効率化、コンプライアンスの遵守、そして不正防止を目的とした、実務上極めて重要な手続変更となります。
1.規則導入の背景:不正対策と行政リソースの適正化
USPTOが今回の義務化に踏み切った背景には、主に以下のような理由があります。
(1)不正行為およびコンプライアンス違反への対策
小規模エンティティ(micro entity)に関する虚偽または不適切な証明など、手数料の減額や優先審査の要件を偽って適格性(eligibility)を主張する申請が相次いでおり、これらに対処することを主たる目的としています。
(2)説明責任(アカウンタビリティ)の強化
登録された米国特許実務家は、USPTOの専門職行動規範(Rules of Professional Conduct)および懲戒権の対象となるため、登録された米国特許実務家の義務化は、より信頼性の高い抑止・説明責任メカニズムになると判断されました。
(3)行政リソースの浪費防止
外国からの代理人なし(pro se)による出願は手続上の不備が多く、受領時に公開や審査の準備が整っていないケースが目立ちます。その結果、審査や処理に不釣り合いなほど多くの行政リソースが消費されている現状がありました。
2.実務における運用:出願日の確保とそれ以降の手続
最終規則では、この義務化が実際の現場でどのように運用されるかも明確にされています。
(1)署名が求められるタイミング
外国籍の出願人は、米国の実務家の署名がなくても「出願日(filing date)」を取得すること自体は可能です。しかし、出願日以降に提出される書類は、登録された米国特許実務家の署名がない限り受理(エントリー)されません。
対象となる主な書類は以下の通りです 。
・願書データシート(Application Data Sheets: ADS)
・小規模エンティティ(micro entity)の証明書
・申立書(Petitions)
・補正書(Amendments)
・その他、主要な権利化手続(prosecution)書類
(2)違反した場合の重大なリスク
ルールに従わなかった場合、出願人に以下の深刻な結果をもたらす可能性があります。
(a)権利主張の失敗と追加コスト
例えば、署名のない願書データシート(ADS)が単なる「送付状」として扱われてしまった場合、出願時に発明者、優先権、または利益の主張(benefit claims)が適切に確立されない恐れがあります。これを是正するには、後に修正のための申立(petitions)や追加の費用が必要になります。
(b)重要な請求の喪失
不公開請求(nonpublication requests)や優先審査請求(prioritized examination requests)など、出願時に行う必要がある特定の請求は、適切な署名がない場合、その権利自体が没収(失効)となる可能性があります。
3.規則の性質と適用範囲
(1)手続上の変更であり、実体法には影響しない
USPTOは、この規則が「実体的なものではなく手続上の規則である」と強調しています。したがって、特許性の基準や、出願日を確保するための要件そのものが変更されるわけではありません。
(2)適用時期
本規則は、出願の実質的な有効出願日(effective filing date)に関わらず、規則の発効日(2026年7月20日)以降に受領されるすべての提出書類に対して適用されます。
(3)外国籍判定に対する反論
出願人が、「外国籍(外国に住所を有する)」と誤って判定されたと考える場合は、登録された米国特許実務家による代理前であっても、その決定に対して反論の回答を行うことが認められています。ただし、根拠のない主張や結論だけを述べたような主張では、認められる可能性は低いとされています。
[担当]深見特許事務所 赤木 信行
[情報元]
1.IP UPDATE (McDermott) “Ticket to ride: USPTO requires counsel for foreign patent applicants” April 3, 2026
2. “USPTO issues final rule requiring foreign applicants and patent owners to be represented by a registered patent practitioner”(USPTOウェブサイトより)

