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査定系再審査に大きな転換点:特許権者による開始前の意見提出が可能に

 米国特許商標庁(USPTO)は、2026年4月1日付の官報(Official Gazette Notice)において、査定系再審査(ex parte reexamination)の手続きに関する重要な変更を発表しました。これにより、特許権者はUSPTOが再審査を開始(initiate)するかどうかを決定する前の段階で、意見を提供できるようになります。

 

1.従来の制度と変更の背景

 査定系再審査は、第三者が裁判所外で特許の有効性に異議を申し立てることができる行政的な仕組みです。当事者系レビュー(IPR)や付与後レビュー(PGR)が特許審判部(PTAB)の審判官によって審理されるのとは異なり、査定系再審査は中央再審査部門(CRU)が担当します。そしてその手続きが開始されるかどうかは、請求(request)が「実質的な新しい特許性の問題(SNQ:substantial new question of patentability)」を提起しているかどうかにかかっています。

 従来の制度では、特許権者は再審査が命じられた(ordered)後であれば手続きに参加できたものの、USPTOがSNQの有無を判断する前に反論を提出する機会はありませんでした。歴史的に、再審査を開始するかどうかの決定は、請求人が提出した書類のみに基づいて行われていました。

 しかし今回の新ポリシーの導入により、特許権者は、再審査手続を開始するかどうかを決定するための閾値となるSNQの有無の判断に影響を与えるために、限定された「再審査命令前の書面(pre-order paper)」を提出することが認められるようになりました。

 

2.「再審査命令前の書面(pre-order paper)」の具体的なルールと制限

 「再審査命令前の書面(pre-order paper)」の提出は任意(optional)ですが、利用する際には以下のような厳格なルールと制限が課されます。

(1)提出期限

 再審査請求の送達(service)から30日以内に提出しなければならず、期間の延長は一切認められません。

(2)ページ制限

 書面は30ページ以内に制限され、引用された先行技術がなぜSNQを提起しないのかという点に焦点を当てる必要があります。

(3)添付書類の扱い

 特許権者の主張を支持する宣言書(Supporting declarations)の添付は認められており、これは30ページの制限にはカウントされません。ただし、他の書面を引用することによる内容の組み込み(incorporation by reference)は禁止されています。

(4)議論の範囲(スコープ)の制限

 特許権者の書面は、請求で提起された問題のみに直接関連していなければならず、請求に関連していない事項を扱うことはできません。例えば、35 U.S.C. § 325(d) に基づく裁量的却下(discretionary denial)に関する議論は、SNQの判断自体には関係がないため、書面に含めるべきではないとUSPTOは明示しています。

 

3.請求人側の反論機会は限定的

 特許権者に早い段階での提出権が与えられる一方、異議を申し立てた請求人側がこの特許権者の書面に再反論する機会は非常に限定されています。

(1)原則禁止と例外

 通常、特許権者の再審査命令前の書面に対する請求人からの回答は認められません。ただし、請求人が請願(petition)を行うことで、10ページを上限とする答弁書(reply)の提出が認められる場合があります。

(2)答弁書の要件

 答弁書を提出する場合、特許権者の書面が送達されてから15日以内に提出する必要があり、さらに所定の費用の支払いが必要となります。

 

4.実務に与える影響と対策

 この変更は、今後の査定系再審査における実務のダイナミクスを大きく変化させる可能性があります。

 特許権者にとっては、プロセスのより早い段階で自らの主張を提示できるようになり、USPTOが再審査を命令する前に、請求が本当にSNQの基準を満たしているかを精査するのを手助けできるというメリットがあります。

 一方で、特許の有効性に異議を申し立てる請求人にとっては、最初の請求の重要性がこれまで以上に高まることになります。請求人は、特許権者が開始決定の前に反論を展開してくる可能性があること、そしてそれに対する自らの答弁の機会が極めて限られていることを想定した上で、最初の請求をより綿密かつ強固に起草しなければなりません

[担当]深見特許事務所 赤木 信行

[情報元]

     1.IP UPDATE (McDermott) “How ex parte is ex parte reexam?” April 16, 2026

https://www.ipupdate.com/2026/04/how-ex-parte-is-ex-parte-reexam/

     2.“Pre-order Procedure regarding Substantial New Question determination in ex parte Reexamination Proceedings” (USPTOウェブサイトより)
https://patentsgazette.uspto.gov/week17/OG/TOC.htm#ref9