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CAFC、表示仕様の最適化に関する結果指向クレームは特許不適格と判示

 米国連邦巡回控訴裁判所(CAFC)は、サーバーが無線端末からの要求に応じてコンテンツを抽出し、当該端末の画面サイズや能力に合わせて表示仕様を最適化した上で配信する特許について、米国特許法第101条の特許適格性を有しないとして、一審の地方裁判所の判断を覆し、特許無効の判決を下しました。

GoTVStreaming, LLC v. Netflix, Inc., Case Nos. 2024-1669, 2024-1744 (Fed. Cir. Feb. 9, 2026)

 

1.経緯

 特許権者であるGoTVStreaming, LLC(以下「GoTV社」)は、サーバーを介して無線端末の能力に応じた表示仕様の最適化(テーラリング)を行う方法およびシステムに関する、互いに関連する3つの米国特許(第8,478,245号、第8,989,715号、および第8,103,865号。以下、総称して「本件特許」)を保有しています。

 GoTV社は2022年10月、Netflix, Inc.(以下「Netflix社」)を相手取り、本件特許を侵害しているとして、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所に提訴しました。Netflix社は、本件特許の全クレームが特許法101条のもとで特許不適格であり無効であるとして、訴答に基づく判決(Judgment on the Pleadings)を地裁に申し立てました。

 2023年5月、地方裁判所は最高裁判例の2ステップテスト(Aliceテスト)のStep 1を適用し、「本件クレームは抽象的アイデアに向けられたものではない」と判断してNetflix社の申立てを退け、特許適格性を肯定しました。その後、最終的にNetflix社による一部特許の侵害と損害賠償を認める終局判決が出されました。この判決に対し、GoTV社が自己に不利な判断を不服として控訴を行い、Netflix社が、地裁で退けられていた101条の特許適格性に関する判断を覆すために交差控訴を提起しました。

 

2.争点となっているクレーム

 本件特許が解決しようとする従来技術の課題は、無線端末の画面サイズ、解像度、カラーパレット、動的コンテンツの処理能力がメーカーやモデル(ブランド)ごとに多種多様に異なっているという点にあります。従来、開発者は各端末の仕様に合わせてアプリケーションをはじめから個別に開発・最適化する必要があり、膨大なコストがかかっていました。本件特許はこの課題を解決するため、ネットワーク上のサーバーに「ジェネリック(特定の端末に依存せず汎用的)」なコンテンツを持たせ、端末からの要求に応じてサーバー側で表示仕様を「テーラリング(最適化)」して送信するシステムを提案しました。

 CAFCにおいて、適格性判定の代表クレームとして扱われた第8,103,865号(以下、「’865特許」)のクレーム1は以下の通りです。

 

クレーム1(’865特許)

1. A server implemented method for processing data for a wireless device, comprising:

        receiving from the wireless device a request for an application program, said request including an indication of a type of the wireless device;

        executing, in response to receiving said request, said application program to generate a wireless device generic template including a plurality of content items;

        sending a custom configuration to the wireless device, said custom configuration being specific to said application program;

        generating a page description based on said wireless device generic template and a capability of the wireless device, said page description having at least one discrete low level rendering command that is within said rendering capability of said wireless device but that is of a syntax that is wireless device generic;

       and sending said page description to the wireless device such that the wireless device is capable of presenting at least one content item from said plurality of content items using both said page description and said custom configuration.

(試訳)

1. 無線端末のためのデータを処理するためのサーバーで実行される方法であって、

        前記無線端末からアプリケーションプログラムの要求を受信するステップであって、前記要求は前記無線端末の種類の表示を含む、ステップと、

        前記要求の受信に応答して、前記アプリケーションプログラムを実行し、複数のコンテンツアイテムを含む無線端末ジェネリックテンプレートを生成するステップと、

        前記無線端末へカスタム構成を送信するステップであって、前記カスタム構成は前記アプリケーションプログラムに固有である、ステップと、

        前記無線端末ジェネリックテンプレートおよび前記無線端末の能力に基づいてページ記述を生成するステップであって、前記ページ記述は、前記無線端末のレンダリング能力の範囲内であるが無線端末ジェネリックな構文である、少なくとも1つの離散的な低レベルレンダリングコマンドを有する、ステップと、

        前記無線端末が、前記ページ記述と前記カスタム構成の両方を用いて、前記複数のコンテンツアイテムから少なくとも1つのコンテンツアイテムを提示できるように、前記ページ記述を前記無線端末へ送信するステップと、

        を含む、方法。

 

 特に争点となるのはクレームの上記太文字部分でして、これは、平たくいえば「『特定の端末(iPhoneやAndroidの特定の機種など)に依存しない、汎用的な画面の雛型』を『対象の端末の画面の大きさや解像度等のスペック』に合わせるために、その雛型を最適化(テーラリング)した表示データ(ページ記述)を生成し、その表示データは、対象の端末のスペック範囲であって、どんな機種でも共通して読み取れる汎用な言葉で記述されている(無線端末ジェネリックな構文である)」という意味と捉えてよいでしょう。

 

3.CAFCの判断

 CAFCは、101条の特許適格性(Aliceの2段階アプローチ)についてゼロベース(de novo)で再審理し、地裁の判断を覆して「本件特許はすべて無効」と結論付けました。具体的なロジックは以下の通りです。

 

 (1)AliceテストStep 1:抽象的アイデアの該当性

 CAFCは、クレーム1の本質は、「少なくともいくつかの点でジェネリック(共通化)されたテンプレートの仕様セットを、ユーザー側の制約に合わせて(最終成果物たる画像を画面にレンダリングするために)テーラリング(最適化)する」という「抽象的なアイデア」に向けられていると判示しました。

 裁判所は、このような「テンプレートを個別の寸法に合わせて調整する」という概念は、コンピュータの世界に限られたものではないと指摘しました。具体的には、衣服の型紙の仕様を個人の体型に合わせて仕立て直すことや、システムキッチンの設計図を実際の壁の寸法に合わせて調整するといった、「人間社会で古くから広く行われてきた普遍的な慣行」と本質的に同一の抽象概念であると判断しました。

 GoTV社は、本件特許が「特定のデータ構造」を要求する独自のアーキテクチャを用いたコンピュータ/ネットワーク機能の改善であると反論しました。しかしCAFCは以下の理由等からこれを一蹴しました。

  • クレームは、サーバー、無線端末、通信ネットワークのいずれにおいても、「新しいハードウェア」を一切要求していない。
  • 特に、無線端末のレンダリングプロセスの改良を要求するものではなく、無線端末の制約内でレンダリングを行うための最終的な仕様を提供するに過ぎない。
  • 受信、保存、処理、送信といった、通常のコンピュータの機能の改良を要求するものではない。

 

(2)AliceテストStep 2:「遙かに超える追加要素(発明概念)」の有無

 Step 1を不合格としたため、CAFCは、クレームが、「発明の概念(inventive concept)」を含んでいるかを評価しました。

 CAFCは、「私たちは繰り返し、クレームが機能的で結果指向(functional, result-focused language)の表現を用いているだけでは、あるいは通常のコンピュータやネットワークが抽象的なアイデアを実行するために通常の機能を果たすことを包含しているだけでは、たとえそれが特定の用途や環境(例えば、特定の主題)に限定されている場合でも、それらの機能の実行方法を改善するための具体的な実装を要求しない限り、審査に合格するには不十分であることを強調してきました。」と前置きした上で、問題のクレーム1は、通常のコンピュータとネットワーク以外のものを要求するものでなく、サーバー外で既に収集・結合された情報を収集・結合し、カスタマイズされた画像記述を作成して(改良されていない)無線端末に送信し、その端末が独自のレンダリング能力を用いて画面に表示するだけであるとして、AliceのStep 2の要件を満たしていないと判断しました。

 その結果、CAFCは、問題のクレームは米国特許法第101条に基づき特許適格性を欠くため無効であると結論付け、一審の地方裁判所の判断を覆し、特許無効の判決を下しました。

 

4.実務上の留意点

 本事案は、広範な権利確保を狙った「結果指向クレーム」と、特許不適格性判断の回避のためにクレームを実施例へと詳細限定することによる権利範囲の狭小化との間で、ソフトウェア特許が抱えるジレンマを浮き彫りにしているようです。

 CAFCは、達成すべき技術的効果や目的のみを機能的言語で規定し、それを実現するための具体的な手段を欠いているようなクレームを、「結果指向クレーム」と称し、単なる抽象的アイデアに過ぎないと一蹴する傾向にあるように思われます(Hawk Technology Systems, LLC v. Castle Retail, LLC 事件、Beteiro, LLC v. DraftKings Inc. 事件、US Patent No. 7,679,637 LLC v. Google LLC 事件等)。

 本件では、「端末の能力(画面サイズ等)に応じて最適化したレンダリングコマンドを生成・送信する」ということを述べているだけで、サーバーがそれを「どのように(How)」具体的に実現しているのかという手段がクレームに記載されていなかったことが問題となりました。

 CAFCは、判決の中で「明細書に現れるクレームされていない詳細な記載ではなく、クレームされた特徴のみが、不適格な事項を超える何か――ここでは、抽象的アイデアを超え、クレームを特許適格なものとするのに十分な何か――を提供することができる。」と説示しています。

 それは、「言わずもがな」であり、テーラリングの具体的なアルゴリズムをクレームに詳細に限定すれば、「単なる抽象的アイデア」と評価されるリスクを低減できますが、競合他社は、アルゴリズムをわずかに改変し、特許を迂回するかもしれません。出願人としては、実施例に記載されたアルゴリズムに限定されない広範囲な文言でクレームしたいところであり、それが結果的に「結果指向クレーム」と評価されてしまうのでしょう。

 しかしながら、何らかの対策を立てて101条違反のリスクに備える必要があります。

 1つには、広範な権利確保を狙ったクレームに加えて、実施例に記載のアルゴリズムを考慮した「101条対策クレーム」を予め設けておき、少なくとも101条対策クレームについては、AliceのStep 1において単なる抽象的アイデアと評価されることを避けるようにしておくことが考えられます。

 他の案としては、AliceのStep 1において単なる抽象的アイデアと評価されることを想定し、クレームの中にAliceのStep 2に耐え得る「追加の構成要素:遙かに超える追加要素(発明概念)」が存在すると反論できる準備をしておくことでしょうか。

 しかし、本件判決の中でもCAFCがAliceのStep 2の分析に入る際に「実際問題として、Step 1で特許適格性を争う者(無効を主張する側)に有利な判断が下された後に、Step 2で特許権者に有利な判断が下された当裁判所の事件はほとんど存在しない。」と前置きしているように、実際には、このような対策が役立つことに期待できないでしょう。

 審査段階であれば、USPTOの審査基準(MPEP§2106.04(d))に従う「Step 2A Prong Two」を活用し、「司法例外を実用的応用に統合する(practical application)追加要素」を「結果指向クレーム」にプラスする、という対策が有効と考えられます。Prong Twoでは、追加要素に「遙かに超える」という要件は課されず、慣習的な要素であってもパスする余地があるためです[1]。ただし、「Step 2A Prong Two」は、Aliceの最高裁基準に直接には存在せず、USPTOによる解釈基準と考えられ、仮に審査段階で101条をパスしても、裁判所で争われた場合には注意が必要です[2]

 

[1] 2019 年改訂特許適格性ガイダンスには、「審査官は、実用的応用への統合を評価する際に、慣習的であるかどうかにかかわらず、全追加要素を重視するようにすべきであり、慣習的な要素を含むクレームであっても、司法例外が実用的応用に統合し、適格性要件を満たす可能性があることに留意する必要がある。」と記載されています。

[2] Rideshare Displays, Inc. v. Lyft, Inc. (Fed. Cir., Sept. 29, 2025)において、CAFCは、「審判部は、米国特許商標庁(USPTO)の2019年改訂版特許適格性ガイダンスと、…2019年10月の改訂版を用いた。…本裁判所は、本裁判所を拘束するものではないこの枠組みを採用せず、代わりに、Alice事件で示された2ステップテストに従う判例に基づいて審判部の決定を評価する。」と前置きし、USPTOがProng twoで101条を認めたクレームの特許適格性を否定しています。

[担当]深見特許事務所 中田 雅彦

[情報元]

     1. McDermott Will & Emery IP Update | February19,2026 “Here’s an abstract idea: Patent eligibility depends on what is claimed, not unclaimed disclosure”
https://www.ipupdate.com/2026/02/heres-an-abstract-idea-patent-eligibility-depends-on-what-is-claimed-not-unclaimed-disclosure/

     2. GoTV Streaming, LLC v. Netflix, Inc., Case Nos. 24-1669; -1744 (Fed. Cir. Feb. 9, 2026)(判決原文)
https://www.cafc.uscourts.gov/opinions-orders/24-1669.OPINION.2-9-2026_2644908.pdf