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IPR請求期限に関するPTABの決定の上訴可能性

概要
 2018年1月8日、CAFCは、Wi-Fi One, LLC v. Broadcom Corp.事件において全裁判官出席の上での判決を出しました。本判決により、315条(b)に基づく期限が切れたかどうかについての特許審判部(PTAB)の決定は、CAFCにより再審理可能であるとされました。今回の全裁判官出席の上での判決は、前回のAchates Reference Publishing, Inc. v. Apple Inc.事件におけるCAFCの裁判官からなるパネルによる判決を覆すものです。前回の判決では、315条(b)に基づく期限が切れたかどうかについての決定は、314条(d)に基づき、最終的かつ上訴不可能であるとされました。

経緯
本件は、AIAにおける当事者系レビュー(IPR)の手続を規定する2つの条項、すなわち314条(d)および315条(b)に関するものです。315条(b)に基づき、「IPRの申立書が、申立者、関係当事者、申立者の利害関係人に対して、特許を侵害しているとする訴状が送達された日付から1年を超えてから提出された場合、IPRの開始を許可することはできない」ことになっています。314条(d)に基づき、「IPRを開始するかどうかに関する特許庁長官の決定は、最終的かつ上訴不可能なもの」とされています。
 CAFCは、Achates事件においてこれらの2つの条項について初めて審議しました。本審議では、314条(d)は、IPRの申立書が315条(b)に基づく期限を過ぎたものであったかどうかに関する特許審判部の決定についての司法審査を認めないものであるとしました。Achates事件に続いて、最高裁は、Cuozzo Speed Technologies, LLC v. Lee事件において判決を出しました。
 Cuozzo事件において、最高裁の過半数の裁判官は、314条(d)のため、IPRを開始するとした特許審判部の決定に異議を申立てることはできないとしました。一方で、最高裁の同判決を考慮すると、憲法上の質問を暗示する、もしくはIPR開始の特許庁長官の決定についての制定法を越える解釈についての他の質問を示す案件における上訴の可能性があるように思われます。
 本件では、2013年、Broadcom社は、IPRの申立書を提出しました。これに対して、Wi-Fi社は、特許庁長官には、315条(b)に基づきIPRを開始させる権利が十分にないと反論しました。この反論では、Broadcom社は、2010年に、すなわち、申立書提出前1年より前に、同一特許を侵害するとした訴状を送達された被告と利害関係にあったと主張しました。従って、Wi-Fi社は、IPRの申立書を、315条(b)に基づく期限が切れているため提出することができないと主張しました。
 特許審判部は、利害関係にあるとされる人物に関するディスカバリーを求めるWi-Fi社からの請求を却下し、異議が申立てられたクレームについてIPRを開始し、書面による最終決定において異議が申立てられたクレームが特許取得不可能であるとしました。これを不服として、Wi-Fi社は上訴しましたが、CAFCの裁判官からなるパネルは、Wi-Fi社の主張を却下しました。これは、Achates事件により、315条(b)に基づく期限が切れたかどうかについての決定を不服としての上訴が不可能であり、特許審判部の決定が確認支持されたからです。これに対して、Wi-Fi社は、全裁判官出席の上での再審理を請求したところ、CAFCにより認められました。

[情報元]Oliff Special Report, January 31, 2018
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和