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米国最高裁による増額損害賠償に関する裁定基準の緩和

 2016年6月13日、米国最高裁判所は、2件の事件に関する判決を出しました。これらの事件では、284条に従い故意侵害に基づく増額損害賠償の基準が検討されました。Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc.事件とStryker Corp. v. Zimmer, Inc.事件のそれぞれにおいて、増額損害賠償は、Seagate事件(CAFC; 2007)に記載のテストの適用に基づき拒否されました。Seagate事件では、明白かつ確信を抱くに足る証拠(clear and convincing evidence)が必要であるとされました。その証拠とは、(1)侵害者が、自己の行為が有効特許の侵害になるという可能性が客観的に大であるにもかかわらず行動した、および(2)客観的に高いリスクは、被疑侵害者に対して周知であった、もしくはあまりにも自明であったため周知であったはずである、ということでした。Halo事件とStryker事件の判決では、最高裁は、全裁判官一致でSeagate事件のテストを厳しすぎるとして拒絶し、地方裁判所には「実にひどい(egregious)」事件において増額損害賠償を裁定する自由があることを強調しました。

(1.特許権者の主張)
 Halo事件とStryker事件の特許権者は、故意侵害であると認められた場合、Seagate事件のテストでは、284条に基づき損害賠償を増額することができる地方裁判所の自由が許されないほど制限されていると主張して、最高裁における見直し(review)を請求しました。また、Halo事件とStryker事件の特許権者は、Seagate事件の2部制テストは、厳しすぎるものであり、侵害者が訴訟中に軽薄でない弁護を示すことが可能な場合、訴訟提起前にクレームに記載の発明を不当に使用しても、故意であることの事実認定を避けることが可能であると主張しました。

(2.最高裁判所の判決)
 最高裁判所は、特許権者に同意し、Seagate事件の2部制テストは、284条と一致していないとしました。最高裁は、「特許法に基づく増額損害賠償の経緯と一致して」、「故意侵害もしくは不誠実な侵害の場合」、損害賠償を増額して取戻すことができると認めました。最高裁は、主に、「全事件において、地方裁判所が増額損害賠償を裁定する要件として、客観的に無謀であった(objective recklessness)という事実認定を義務付ける」ため、Seagate事件の2部制テストが厳しすぎるものであるとしました。
 従って、最高裁は、「284条において、地方裁判所には、Seagate事件のテストの適応性のない制限にとらわれず判断する権限がある」としました。この判断の実施に関する最高裁からの唯一のアドバイスでは、増額損害賠償は、「通常、故意の違法行為(willful misconduct)により代表される実にひどい(egregious)事件のために取っておかれるべきである」とされています。更に、最高裁は、(i)明白かつ確信を抱くに足る証拠の基準(clear and convincing evidence standard)ではなく、証拠の優越の基準(preponderance of the evidence standard)に基づき増額損害賠償を評価すべきである、および(ii)上訴において、判断の誤用であるかどうかを見極めるため、地方裁判所による増額損害賠償の裁定の判決を見直すべきであるとしました。

[情報元]Oliff Special Report, June 16, 2016
[担当]深見特許事務所 紫藤 則和