国内裁判例・審決例レポート

国内裁判例・審決例
レポートアーカイブ

国内裁判例レポート 2023年 第23号

「ドワンゴ対FC2」第2事件
(知財高判令和5年5月26日 令和4年(ネ)第10046号)
(1)海外に設置されたサーバと日本国内に存在するユーザ端末とによってコメント配信システムを新たに作り出す被告の行為が、特許法2条3項1号所定の「生産」に該当するか否かが争われた事例。
(2)原審では、特許法2条3項1号の「生産」とは特許発明の全ての構成要件を満たす物が日本国内において新たに作り出される必要があるとの理由により、被告行為は非侵害と判断された。しかし控訴審では、具体的態様等の事情を総合考慮すると、当該行為が日本国の領域内で行われたものとみることができるとの理由により、特許権侵害を認めた。
(3)ネットワーク関連発明に係る特許権の域外適用に関する判断事例。

国内裁判例レポート 2023年 第22号

「印刷された再帰反射シート」事件
(知財高判令和4年10月31日 令和3年(行ケ)第10085号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、副引例(甲3)に記載の技術事項を主引例(甲1)に適用する動機付けはなく、また主引例の一部の構成のみを取り出して副引例の構成に置換する動機付けもないと判断した(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第21号

「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機」事件
(知財高判令和5年4月20日 令和4年(行ケ)第10098号)
(1)審決取消訴訟において、新規性および進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、「直後方」の限定を考慮し、甲1発明に対する本件発明1の新規性および進歩性を肯定した(特許庁審決の判断を支持)。

国内裁判例レポート 2023年 第20号

「朔北カレー」事件
(知財高判令和5年3月9日 令和4年(行ケ)第10122号)
(1)審決取消訴訟において、出願商標「朔北カレー」と引用商標「サクホク」との類否が争点となった事例。
(2)本願商標より「朔北」部分を抽出して分離観察することを是としつつ、特に観念を積極的に認定し、引用商標とは非類似と結論づけた(特許庁審決を取消)。
(3)称呼が同一である漢字(表意文字)からなる商標と片仮名(表音文字)からなる商標について、類否を判断する際の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第19号

「空気入りタイヤ」事件
(知財高判平成29年2月7日 平成28年(行ケ)第10068号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)裁判所は、副引例(甲2)に記載の技術事項を主引例(甲1)に適用しても、数値限定を含む本件発明の構成を容易に想到できないと判断した(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第18号

「空調服の空気排出口調整機構」事件
(知財高判令和5年2月7日 令和4年(行ケ)第10037号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)技術分野の関連性および課題の共通性を考慮して、主引用発明(公然実施発明)に接した当業者は、副引用発明を採用するように動機付けられたものと認めるのが相当として、本件発明の進歩性を否定した(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第17号

「アプリケーション生成支援システム」事件
(知財高判令和元年9月19日 平成31年(行ケ)第10005号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)引用発明に周知技術を適用することの動機付けがないから、相違点1の構成について、本件補正発明の構成とすることは容易に想到することはできないと判断された(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第16号

「ソルダペースト組成物及びリフローはんだ付方法」事件
(知財高判平成30年2月20日 平成29年(行ケ)第10063号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)特許庁では、顕著な効果が認められて進歩性ありと判断されたが、裁判所では顕著な効果が認められないため進歩性なしと判断された(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第15号

「セボフルランの貯蔵方法」事件
(知財高判平成21年4月23日 平成18年(ネ)第10075号)
(知財高判平成22年1月19日 平成20年(行ケ)第10276号)
(1)特許権侵害訴訟において、クレームにおける「ルイス酸抑制」の用語の意義が明細書等の記載を参酌して限定解釈され、関連の審決取消訴訟において、分割要件違反、実施可能要件違反が指摘された事例。
(2)「ルイス酸抑制」の具体例として、明細書には「化学的中和による抑制」の開示しかないことが問題とされた。「物理的遮断による抑制」(被告方法)とのメカニズムの違いが争点化された。
(3)クレーム拡張型分割出願の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第14号

「角度調整金具用揺動アーム」事件
(大阪地判平成24年5月24日 平成23年(ワ)第9476号)
(1)特許出願から意匠出願へ変更した後、意匠権侵害差止を請求した事例。
(2)特許出願から意匠出願への変更の適法性と、登録意匠と被告意匠との類否が争われた。