国内裁判例・審決例レポート

国内裁判例・審決例
レポートアーカイブ

国内裁判例レポート 2023年 第13号

「ドワンゴ対FC2」第1事件
(知財高判令和4年7月20日 平成30年(ネ)第10077号)
(1)海外に設置されたサーバによる動画配信サービスに対して日本の特許権を行使できるか否か(域外適用の有無)が争点となった事例。
(2)原審ではイ号が構成要件非充足と判断され、域外適用の判断無しであったが、控訴審ではイ号が特許発明の技術的範囲に属すると判断され、その一部が日本国外で実施されていても、全体として日本国の領域内で行われたものと評価するのが相当として、特許権侵害を認めた。
(3)ネットワーク関連発明に係る特許権の域外適用に関する判断事例。

国内裁判例レポート 2023年 第12号

「ガス系消火設備」事件
(知財高判令和5年3月27日 令和4年(行ケ)第10009号)
(1)特許取消決定取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)特許庁での特許取消決定における、甲1に甲2を組み合わせた上でさらに修正することは、当業者が容易に想到し得るものではないと判断した(特許庁の特許取消決定の判断が否定された)。

国内裁判例レポート 2023年 第11号

「積層体」事件
(知財高判令和5年3月9日 令和4年(行ケ)第10030号)
(1)特許取消決定取消訴訟において、「除くクレーム」が争点となった事例。
(2)本件訂正における「除くクレーム」が特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加には当たらないと判断した(特許庁取消決定の判断を否定)。
(3)「除くクレーム」が新規事項の追加になるか否かを判断する際の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第10号

「モニタリング装置」事件
(知財高判平成30年4月16日 平成29年(行ケ)第10139号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性の判断の誤りが争点となった事例。
(2)引用発明における条件判断の順序を入れ替えることが、単なる設計変更であるということはできないから、相違点に係る本願補正発明の構成は、容易に想到することができるものではないと判断された(特許庁審決を取消)。

国内裁判例レポート 2023年 第9号

「5-アミノレブリン酸リン酸塩、その製造方法及びその用途」事件
(知財高判令和5年3月22日 令和4年(行ケ)第10091号)
(1)審決取消訴訟において、新規性が争点となった事例。
(2)原告が主張するような引用発明を引用文献から認定することはできないとして、本件発明は新規性を有すると判断した(特許庁審決の判断を支持)。
(3)化合物発明の新規性を主張するにあたって参考になる事例。

国内裁判例レポート 2023年 第8号

「流体供給装置」事件
(知財高判令和3年6月28日 令和2年(ネ)第10044号)
(1)特許権侵害訴訟において、「記憶媒体」の用語の意味が争点となった事例。
(2)控訴審(知財高裁)において、明細書における「課題」の記載を参酌し、「媒体預かり」と「後引落し」との組合せによる決済を想定できない記憶媒体(非接触式ICカード)は本件発明の「記憶媒体」には当たらないと判断された(原審において、この点は争点化されていなかった)。
(3)特許権侵害訴訟におけるクレーム解釈の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第7号

「液体を微粒子に噴射する方法とノズル」事件
(知財高判令和2年5月27日 平成30年(ネ)第10016号)
(1)特許権侵害訴訟において、本件発明の「微粒子」の用語の意味が争点となった事例。
(2)原審は本件発明の「微粒子」を「10μm以下の液滴」と解釈して非侵害と判断したが、控訴審は「小さな粒子径の粒子を意味するものであって、粒子径の数値範囲に限定はない」と解釈して侵害と判断した(原審の判断を覆した)。
(3)特許権侵害訴訟におけるクレーム解釈の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第6号

「個人情報に基づいてユーザに注意を促す、情報処理装置」事件
(知財高判令和4年11月29日 令和3(行ケ)10027号)
(1)審決取消訴訟において、進歩性が争点となった事例。
(2)相違点の容易想到性を否定する特許庁審決の判断が支持された。
(3)サービス提供のための処理をサーバを含むシステム全体で行うか単独のユーザ端末で行うかの相違に基づいて、設計的事項ではないとして進歩性を主張する際の参考事例。

国内裁判例レポート 2023年 第5号

「耕耘爪」事件
(知財高判令和4年12月22日 令和4年(行ケ)第10027号 )
(1)審決取消訴訟において、他の争点とともに、明確性要件が問題とされた事例。
(2)請求項中の「『略』一定の距離」、「『略』同じ位置」との文言について、本件発明の技術分野(その性質上要求される精度の観点)及び明細書等の記載を参酌して、発明は明確であると判断した(特許庁審決の判断を支持)。
(3)「略」のほか、「約」、「およそ」、「実質的に」、「本質的に」等の文言が請求項中に含まれる特許の明確性要件を評価するにあたって1つの参考になる事例。

国内裁判例レポート 2023年 第4号

「多角形断面線材用ダイス」事件
(知財高判令和4年11月16日 令和4年(行ケ)第10019号 )
(1)審決取消訴訟において、明確性要件が問題とされた事例。
(2)請求項中の「『略』多角形」との文言について、本件明細書等の記載および技術常識を考慮しても、「基礎となる多角形断面」と区別ができないとして、発明が不明確であると判断した(特許庁審決の判断を否定)。
(3)「略」のほか、「約」、「およそ」、「実質的に」、「本質的に」等の文言が請求項中に含まれる特許の明確性要件を評価するにあたって1つの参考になる事例。